Autechre - elseq 1-5

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  • Autechreはレインコートの水滴のようにコンテクストを弾き飛ばす。イギリスの二人組である彼らの音楽は不可解なものに発展してきており、2011年の『Oversteps』(英語サイト)以降、ますます鋭さに欠けるサウンドの巨塊となっている。その最初の例が2013年の2枚組アルバム『Exai』(英語サイト)だ。同作で乱雑に網羅された彼らのキャリアは、ときに素晴らしく、ときに失意を覚えるものだった。昨年、ふたりは1時間のライブセット(英語サイト)をコレクションにして発表したが、それは使い古されたサウンドを提供する行為に過ぎなかった。 そして今回の『elseq 1-5』だ。敵意むき出しのモンスタートラック"feed1"の発表から1週間も経たずして、アラスカの学生ラジオ局で新たにトラックが初公開されたのち(英語サイト)、この新アルバムがひっそりと登場した(本作を"アルバム"と呼べるかどうかさえ定かではないのだが)。『elseq 1-5』は5部構成となっており、そのサウンドと同様、頑なにカテゴリー分けを否定する4時間強の長編作だ。本作をどのように区分したとしても、確かなことがひとつだけある。それは、Rob BrownとSean Boothが手掛けた音楽の中でも特に妥協が無く、印象的で、楽しめる作品であるということだ。 『elseq 1-5』の幕を開けるのは、地殻変動を思わせるような轟音による11分のトラック"feed1"だ。このトラックはAutechreのディスコグラフィーの中でも特に重々しく、警告を発しているかのような1曲だ。以降の音楽は友好的ではなく、構造をほとんど持ちあわせていないモノクロなものばかりが続く。さらにどのトラックも長く、10分を超えることが多い。20分を超えるものも3曲ある。その3曲は非常に不可解な内容だが、同時に興味をそそられるものでもある。27分にわたって細やかで複雑な変化が加えられる"elyc6 onset"は、有機物質のように激しく振動するサウンドで満たされている。同トラックをとげとげしくしたような"mesh cinereaL"では忍耐が求められる。疲弊したビートが最終的に『Oversteps』スタイルの鮮烈なメロディセクションへと展開したあと、トラックは機械的なノイズの嵐によってばらばらに吹き飛ばされる。3曲の中でベストは"eastre"だ。BoothとBrownが美しい音のタペストリーをつついて穴を開け始めるまでは、じわじわと変化する奇妙なドローントラックとなっており、Stars Of The Lidを思わせる。 本作には、滑らかな表面を持つサウンドと、ゆっくりと変化するざらついたサウンドがせめぎ合っている場面がいくつかある。例えば"latentcall"は後半になるとエレクトロのパターンへと滑り込んでいく一方で、"c16 deep tread"のブロークンビーツはヒップホップを愛するふたりを示唆している。"foldfree casual"では心地よい音色と悲痛なメロディが不意に現れ、"spaces how V"には初期のAutechreに立ち返ったような冷ややかな魅力がある。このトラックとそれ以降の「elseq 5」に含まれているトラックは、アルゴリズムと非人間性を好むようになったAutechreから離れていった昔のファンたちを魅了するものかもしれない。しかし、こうしたトラックは非常に大きな全体像のほんの一部に過ぎず、スタティックノイズがぬかるむ"c7b2"や、忙しなく変動する"7th slip"のようなトラックも本作には含まれている。 明らかな問題は『elseq 1-5』が4時間8分の長さということだ。敬虔なAutechreファンでも本作を一気に聞き通すことはないだろう。しかし、5部構成の順番や、各部が別々に入手可能になっていることを考えると、本作は一度に聞かれることを意図しているわけではないのかもしれない。むしろ、従来のフォーマットの必要性を超えた領域に進もうとしているコレクション、という印象で、本作を任意の地点にスキップして聞き始めたり、シャッフルモードで聞いたりしたとしても、直線的な視聴行為と等しく豊かな音楽体験が提供される。 Warpは『elseq 1-5』のフィジカルリリースを行う予定は無いと発表している(英語サイト)。Autechreは、彼らの名前が載っているものであれば何でも手に入れたがるファンを持つアイコン的ユニットだ。そのことを考えれば、デジタル限定で『elseq 1-5』が発表されることは一大事である。この決断は、Autechreが制作とランダマイズを融合し、メロディと拍子を数学に置き換え、より一層大きなプロジェクトを手掛けるようになって以来、彼らが進み続けてきた方向性と重なるものだ。『elseq 1-5』は明確な筋道を持たず、いかなる解釈をも拒絶する作品だ。濃密で当惑させられ、ときに楽しく感じられるエレクトロニックミュージックを4時間収録した『elseq 1-5』は、パイオニアふたりが未知の領域へと踏み出した、しかるべき作品だ。
  • Tracklist
      elseq 1 01. feed1 02. c16 deep tread 03. 13x0 step 04. pendulu hv moda 05. curvcaten elseq 2 01. elyc6 0nset 02. chimer 1-5-1 03. c7b2 elseq 3 01. eastre 02. TBM2 03. mesh cinereaL elseq 4 01. acdwn2 02. foldfree casual 03. latentcall 04. artov chain 05. 7th slip elseq 5 01. pendulu casual 02. spTh 03. spaces how V 04. freulaeux 05. oneum