Ion Ludwig - Im Kloster

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  • ミニマルなダンスミュージックの核となる部分では、個性と効率というふたつの要素がせめぎ合っている。オランダのプロデューサーIon Ludwigは好調時であれば、そのふたつのバランスを見事に成立させる作品を制作する。多岐に渡る要素を取り入れた昨年のアルバム『Ghost To Coast』、もしくは、3時間にわたる彼のライブセットをチェックすれば、そのことが分かるはずだ。しかし、2014年にLick My Deckから「Mr. Nubilous」(英語サイト)を発表したときの彼は、ミニマリズムにおける自身の独自性を制御することができなかった。それを清算しているのが「Im Kloster」だ。計3曲を収めた本作には、生き生きと戯れるような彼の一面を映し出したトラックが2曲フィーチャーされている。 Aサイドに収録された長尺の"Now On The Ocean Sky Only Knows Back In The Mountain Is Where It Goes"はLudwigにとって重要作だと言われている。その主な理由は自身のボーカルをフィーチャーしていることだ。しかし、弾力性のあるリズムと編み込まれたベースラインが詰め込まれた同トラックはクラブ使用にぎりぎり耐えうるものだ。Bob Mosesのリハーサルを聞いているような繊細なボーカルの邪魔にならないようにスペースが取られているが、入念に考えた表現というより、ギミックのように感じられる。 「Im Kloster」を手に取るべき作品にしているのはBサイドだ。表題曲は大胆だ。暖かく秋めいた色でトラックをコーティングする暗鬱としたコード進行に乗って滑らかに展開していく。軽快なパーカッションが素晴らしく、実にトラックを引き立てており、複雑ながら直感的なドラムプログラミングにはAサイドよりも疾走感がある。さらに親しみやすいのが"Fizmo Theme"だ。濃密な空間を切り開いていくきらびやかなハイテクシンセとフィルターのかかったドラムサウンドが詰め込まれている。『Ghost To Coast』での素晴らしい場面と同様、「Im Kloster」のBサイドも、削ぎ落とした構造に多くの個性を詰め込めるLudwigの実力を物語っている。
  • Tracklist
      A1 Now On The Ocean Sky Only Knows Back In The Mountain Is Where It Goes B1 Im Kloster B2 Fizmo Theme
RA