Bruce - The Trouble With Wilderness

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  • ブリストルのプロデューサーBruceは奇妙で心地よい形に変えたダンスミュージックをLivity SoundHessle Audio(英語サイト)からリリースしてきた。「The Trouble With Wilderness」では、繊細なサウンドを重ね合わせて悲哀に満ちたメロディを包みこむことで感傷的な要素と向き合っている。その中で彼は意欲的な構造と感情的な共鳴を両立させる作品を生み出した。収録の3曲で認識可能な言葉は5つしか使われていないが、「The Trouble With Wilderness」は2016年で有数の優れたエモーショナルな作品となるだろう。 BruceことLarry McCarthyは2015年のThe Quietusのインタビューで、Hessle Audioに提供した"Trip"で使われていたシリアスでエモーショナル過ぎるシンセを取り除くようにレーベルから言われたと語っている(英語サイト)。「The Trouble With Wilderness」にはそのような編集過程がない。異質なテクノビートから始まる表題曲はエコーの立ち込める空間へと消滅していく。「I will always love you」と厳かにMcCarthyが語り、漂うようにいつまでも記憶に残るピアノを挿入する。8分間におよぶ同トラックでは、切れのいいビートに合わせて、何と言っているのか聞き取り不可能な消え入るボイスサンプルがトラックに織り込まれていく。Burialとは異なり、Bruceは人間ドラマを繰り広げるのに適した舞台として重低音のトラックを捉えている。 "The Trouble With Wilderness"が消滅を表しているとするならば、"Waves (For Yasmin)"には失恋を嘆くMcCarthyが表れている(本作の制作中、彼は涙を流すことがあったという(英語サイト))。幸い、その結果素晴らしいアンビエントトラックが誕生した。彼方から聞こえる高速道路のようなフィールドレコーディングが重々しく処理され、3つのコードに塗り付けられている。ラストの"Summers Got To End Sometime"では希望に満ちたメロディが注ぎ込んでいる。失恋からの脱却を示唆するトラックではあるが、そのサウンドデザインは他の2曲と変わらず脆くまばらだ。いくつかの場面では完全に無音になり、夢心地のリスナーを暴力的なサウンドで驚かせる。ここには思わぬところから感情を絞り出すMcCarthyの一面が表れている。
  • Tracklist
      A1 The Trouble With Wilderness B1 Waves (For Yasmin) B2 Summer's Gotta End Some Time
RA