Losoul - Synchro

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  • Losoulのトラックで最も有名なのは"Open Door"かもしれない。リリースから20年が過ぎた今でもクラブで頻繁にプレイされ続けているミニマルなフロアトラックだ。暖かく毛羽立ったディスコ感覚を持ったこのトラックは彼のサウンドをどことなく間違って映し出すことになっている。ドイツのプロデューサーである彼のトラックは通常、もっと削ぎ落とされており、粘つくベースラインに重々しいドラムサウンドを乗せる以外には使われている素材がほとんどない。"Open Door"と同時期にリリースされていたEP「Synchro」の方が、彼のサウンドと当時(ミニマルがドイツのダンスミュージックを席巻した時代)のサウンドの両方を上手く表している。このEPは人によっては何の変哲もないサウンドに感じられるかもしれないが、Losoulが自身の作品を再発しているレーベルAnother Pictureにぴったりのリリースだ。 "Synchro"が体現しているのは同トラックのリリース後に人気になったスタイル、つまり、具象性を取り除き、生のグルーヴと抽象的なサウンドだけを残したハウスミュージックだ。サンプル音源などの識別可能な楽器素材やボーカルは使われておらず、パンチの効いたドラムと力強く躍動するリズム、そして、フックとなる奇妙な振動ノイズが使われている。"Under"の方が使われている素材が多く、軸となる鼓動の周りは細かなパーカッションのループで溢れている。質素な両トラックはそれぞれ10分を過ぎると退屈に感じられるかもしれない。Losoulにはもっと色彩豊かな作品があり、筆者なら「Synchro」よりそちらを再発していただろう。しかし、本作はこのジャンルにおける隠れたクラシックであり、無数のDJのレコードコレクションに加わる嬉しい1枚となるだろう。
  • Tracklist
      A Synchro B Under
RA