- Steven Van Hulle（Awanto 3）はアムステルダムの色彩豊かなハウスシーンに欠かせない存在で、それに相応しい経歴を持ちあわせている。彼はRush HourやDekmantelといった地元のレーベルからリリースを重ね、Young Marco、San Proper、Tom Tragoといったオランダのプロデューサーたちと共に制作を行ってきた。Dekmantelが"Pregnant"を最初にリリースしたのは2012年のことだが、好評につき、新作をカップリングして再プレスが行われることになった。
"Pregnant"は、ニューヨークのソウルシンガーStephanie Millsによる1982年のブーギー"You Can't Run From My Love"からサンプリングしたブレイクを基盤にしたトラックだ。激しく展開することなく、12分間にわたってゆったりと起伏していながら、甘美な時間を繰り広げている。このように落ち着いたペースアレンジは経験豊かなDJ（シンプルなループを延々と使ってもオーディエンスの意識を掴んでいられることを理解している人）に特有のものだ。展開はほとんどなく、それが素晴らしい。角張った粗放なドラムグルーヴはホームリスニングとしても楽しめる。
奇妙に仕上げられているのが"Star Butchers"だ。Future Timesの作品に似た、陽気でアナログに響く自由な空気が漂っている。強調されたエレクトリックベースと押し潰したようなキックが低域内で互いを押し合っているように聞こえるが、そこに素人っぽさはなく、むしろ、愛着が感じられる。"Darling Edit"ではコミカルに思えるほど陽気にきらめく旋律と玉虫色のシンセが加えられ、原曲の魅力が高められている。今年の夏は、多くのフェスティバルの日中に両バージョンがプレイされることを期待したい。
TracklistA1 Pregnant
B1 Star Butchers
B2 Star Butchers (Darling Edit)