Phonon - 4000

  • Published
    6 Jun 2016
  • Released
    December 2015
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  • ヘッドフォンという機材は「小うるさい自分」を引き出すように思える。超高級素材で作られたドライバーを搭載した最高級モデルを試しても、ヘッドバンドのデザインをやや不快に感じてしまえば、ゲームオーバーだ。頭の形や耳の形、そして良しとするサウンドの基準はひとりひとり異なる。多くの人たちが高精度の周波数特性のモデルを味気のない薄いサウンドだと考える一方で、エンジニアたちは大半のヘッドフォンはサウンドが誇張されていてどぎついと感じている。また、プロデューサーたちがオープンバックモデルは中高域がフラットで良いと評価するのに対し、オープンバックモデルは低域が不足しており、分離も悪いと文句を言う人たちもいる。よって、特定のモデルを明瞭に説明するには、そのモデルのターゲット層が誰なのか、そして何を目的としてデザインされているのかについてしっかりと把握しておく必要がある。Phonon 4000は、名目上は携行性を求めるオーディオファンに向けられたモデルで、音楽をスマートフォンやコンピュータから聴くだけならば、同価格帯でこれよりも酷いモデルに出会う可能性は十分にあるだろう。しかし、今回のテストを通じて、Phonon 4000はDJブースや特定の目的におけるスタジオ利用にも優れていることが分かった。 Phononは日本のメーカーで、過去にリリースしたSMB-02はDixon、Laurent Garnier、DJ Harveyなどのサポートを受けている。このヘッドフォンに寄せられた評価は、ミックスダウンにおける精度の高さを強調していたが、DJブースでも使用されている。筆者は以前からヘッドフォンという存在はどうしてもスタジオかDJブースのいずれかの役割に寄せられてしまうという印象を持っていたので、多種多様なヘッドフォンを手に入れる余裕がある上記のようなプロフェッショナルたちが、両方の目的にこのヘッドフォンを使っていることを不思議に思っていた。Phononは、4000は基本的にはSMB-02のポータブルバージョンであるとしている。4000はSMB-02と同じ40mmのドライバーを使用しており、インピーダンスも大差はない。しかし、4000は軽量化が図られており、希望小売価格が約5000円も安く、折り畳み式が採用されている。また、ハウジングは頭蓋骨をきつく締め付けるというよりは、耳の上に柔らかく乗る感触で、「密閉ダイナミック型」と記載されているものの、耳が密閉される感覚はない。4000を箱から出した時にすぐに感じたのは、その軽さだった。筆者はBeyerdynamic DT 770を長年使ってきたので、その軽さがひときわ目立った。軽さは脆弱という印象を与えやすいが、4000の薄いフレームに安さは感じられなかった。筆者は4000を4ヶ月間テスト使用したが、そのテスト期間を終えたあとにはPhononのそのバランス感覚の良さがしっかりと理解できるようになっていた。4000は頭の上に柔らかく浮いているような装着感で、装着していることを忘れてしまうこともよくあった。しかし、その装着感が重量とデザインだけによるものだと言ってしまうのは短絡的だろう。
    4000を楽に装着できる大きな理由はそのサウンドにある。低域は豊かだが、不自然な感じや強すぎる感じは一切ない。また、密閉型としては珍しくサウンドステージもワイドだ。筆者は大半の時間をダンスミュージックのリスニングに割いているが、その狭い世界の中でも、4000は忠実度や制作手法が異なる様々なトラックに問題なく対応していた。ヘッドフォンによっては、モダンなトラックがテクノロジーに劣る過去のトラックよりも優れて聴こえるが、4000はすべてを等しく扱っている。この点は、様々なスタイルの音楽を取り混ぜて聴いてみると一層明確に分かる。筆者はThe Ex、Albert Ayler、Ellen Fullmanをシャッフルして聴いてみたが、時代、ジャンル、制作手法がそれぞれ異なるにも関わらず、個々の作品でそれまで気付かなかったニュアンスを引きだしていた。 4000の周波数特性を大まかに把握するために、筆者は、SonarworkのHeadphone Calibrationのプラグイン(是非試してもらいたい)を使用したBeyerdynamic DT 770との比較テストを行った。このプラグインは770の持ち上げられた高域と削られた中低域をフラットに整えてくれるのだが、この比較テストは、楽曲の特徴を忠実に再現しながらも、鮮やかに広がって3Dのような音像を提供する4000のサウンドステージがいかに優れているかを更に強調することになった。また、このテストでは、4000の高域の艶やかさも明確になったため、4000には高域のピーク特性がいくつかあることが予想されるが、これは比較テスト時でのみ明確になった部分だった。 また、今回はRane MP2015を通じてアナログレコードを再生し、AIAIAIのTMA-2とSennheiserのHD-25とも比較したが、筆者が4000の強みを明確に理解できたのはこの時だった。TMA-2とHD-25はサウンドを目の前に押し出してくるが、サウンドが色づけられていることも明確に分かり、窮屈にさえ感じる時もあった。一方、4000はより誠実、クリーンかつオープンな印象で、音量の強弱も満足のいくものだったため、長時間の使用に向いているように感じられた。特に低域は活き活きとしている上に余裕も感じられた。この価格帯のヘッドフォンとしては珍しいクオリティと言えるだろう。
    今回のテスト期間中に筆者は4000をDJ用として3回使用したが、ブースでもオフィスとほぼ同じ印象を持った。装着していることを忘れてしまう時があり、他のヘッドフォンよりも色づけされていないサウンドは、特に長めのセットの時に耳の疲労の軽減に役立ってくれた。筆者は基本的にハウジングをやや前にずらした状態で両耳に当てるので、ハウジングを回転させて耳に当てることはほとんどなかったが、4000のハウジングは水平方向に45度回転させて、外側に向けられるため、片方のハウジングを手に持って耳に当てることも可能だ。DJブースにおける4000の唯一の欠点は、比較的短いケーブルの長さだ。ヘッドフォンを装着したままブースの中を動き回る人は、ヘッドフォンジャックを痛めてしまう可能性がある。とはいえ、4000はDJ専用モデルではないため、筆者がケーブルの短さを理由にこのモデルの使用を止めることはないだろう。ちなみにSMB-02のケーブルは3mと、4000の2倍の長さがあるので、Phononのヘッドフォンを使用しているDJは、そのままSMB-02を使い続けることが予想される。 また、スタジオにおける4000は、トラックのレコーディングや展開の構成など、サウンドを楽しみながら長時間の作業をする時に非常に便利に思えたが、細部に気を配りながらミックスダウンをする場合は、個人的にはオープンバックモデルの方が好みだった。なぜなら、4000の高域がどれだけ色づけされているかの判断ができなかったからだ。しかし、4000は色づけを一切行わないことを掲げているヘッドフォンではないので、オープンバックと比較するのはややアンフェアだろう。恐らく筆者がオープンバックモデルを好むのは、自分のモニタリング環境に不安を感じており、ミックスダウンがヘッドフォン偏重になっていることに起因しているので、4000でも素晴らしいミックスダウンができる人も数多くいるはずだ。4000の真の強みはサウンド、価格、携行性であり、移動時やカジュアルユースに理想的だが、このヘッドフォンの魅力をそこだけに限定してプロユースを除外してしまうのは間違いだろう。なぜなら、サウンドと装着感は本当に素晴らしいからだ。個人的には、4000は複数のヘッドフォンを購入する余裕はないがDJ・制作・普段使いを兼ねるヘッドフォンを探しているという人に薦めたいが、「プロユース」という枠によりしっかりと当てはまるヘッドフォンを探している人は、SMB-02をチェックすることを薦めたい。 Ratings / Sound: 4.7 Cost: 4.0 Build: 3.8 Versatility: 3.9
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