Workdub - Workdub

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  • おとなしい典型的な音楽オタクでもバレアリックミュージックとなると(少なくともそれがAlfredoのようなイノベーターによって切り開かれた流れのバレアリックミュージックとなると)躍起になる。Chris Rea "Josephine"やLaid Back "Fly Away / Walking In The Sunshine"といった曲は確かに陳腐ではあるが、一方で美しくもある。セントルイスのVirgil Work Jr.とNicholas Georgieffから成る実質無名のWorkdubは1989年に同市のレーベルMusic From Memoryからプロジェクト名を冠した12インチを発表していた。セカンド・サマー・オブ・ラブが巻き起こっていた時期だ。収録された4曲の制作時、Workdubはエクスタシーでハイになったイビザのツーリストを意識していなかったが、そのサウンドには確かにバレアリックの空気が漂っている。 実質、Workdubの音楽は自主プレスではあったものの、オブスキュアなアシッド・フォークやブーギーの単発作品のそれとは意味が異なっている。MIDIでカバーした"Auld Syng Lang"や、プリセット音源を使ったような"Smooth Funk"などのトラックを含む、近年のWorkによる作品はトレンドから外れた才能溢れる年配アーティストがショッピングモールの外でパフォーマンスしているようなサウンドだ。しかし、80年代後半から90年代前半にかけて制作された彼らの楽曲を発掘していく中で、Music From Memoryは金塊を掘り当てたようだ。 WorkとGeorgieffは自らドラムやパーカッションを演奏しており、1曲目の"Island Breeze"では心を打つ意欲的なフィルインやきらびやかなカウベルを挿入する。エキサイティングで機械的なドラムサークルを思わせるサウンドだ。New World Musicの"Intellectual Thinking"のようなオブスキュアなシンセファンクが持つ、作り込まれていない魅力がここでも感じられる。一方、ダブを取り入れているときの彼らは深くサイケデリックなサウンドを生み出している。適度なけだるさを伴う"Caravan"はハープによる極上のソロ演奏へと解体されていく。Iasosの世界観からそれほど遠くないトラックだ。本作のように意識を吸い込むようなトラックがビギナーズラックで生まれたとは考え難い。Workが後年に制作した音楽は過度にコンピューター化された印象だが、「Workdub」でのふたりはミシシッピ州の脱工業化都市セントルイスを地中海に浮かぶ楽園の島に変えてみせている。
  • Tracklist
      A1 Island Breeze A2 Caravan B1 The Odyssey B2 Caravan Revisited
RA