Binh - Dreifach

  • Share
  • クラブミュージックに必要なものはドラムマシンのリズムと時々挿入される奇妙なノイズ以外にあまりない。最近の作品で言えば、BinhによるEP「Dreifach」がその最たる例だ。各トラックではザップ音や泡立つ音が鳴らされる中に乾いたドラムサウンドが配置されているが、決して単純なものにはなっていない。彼はジャンル縛りのツールを制作するのではなく、少ない音数のリズムと奇妙な雰囲気を伝統的に組み合わせ、誰にも似ていないサウンドを持つ12インチを生み出したのだ。 驚くのは表題曲だ。一般的なリスニング感覚では気付かれないであろう膨大な重低域によって、テクノ仕様のダークな重々しさを実現している。アレンジと構成の面で言えば、緻密に計算しているというよりもリラックスして演じられている印象だが、クラップがシンプルに挿入されることでハイライトが演出するあたりに、正確なタイミングを正確に見抜くBinhのセンスを感じ取れる。 Bサイドにはシンコペートする鋭いトラックが収録されている。非常にタイトなサウンドの"Yougo"では、幼児が錯乱してくぐもった笑い声を立てているような背景音がフィーチャーされている。脅威と陽気さが入り混じった感覚は"Zweifach"でも続いている。"Yougo"と同様、こちらもゆったりとしたペースで展開し、構造や音数の面での変化は少ない。このように微細な変化を伴う強烈な音楽をプレイするときは、ダンスフロアを既に掌握しておく必要があるだろう。その意味で「Dreifach」はDJセットの選曲とペース配分次第で印象が変わる。大仕事をしてくれるわけではないが、上手にプレイすればその日のハイライトになるだろう。
  • Tracklist
      A1 Dreifach B1 Yougo B2 Zweifach
RA