Don't DJ - Authentic Exoticism

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  • Don't DJによる「Authentic Exoticism」の大胆さは称賛に値する。「アイデンティティとオーソリティの関係図を描く」ことを目的とするレーベルSEXESからリリースされた本作は音楽における文化的融合をテーマにしている。少し気味の悪いカバーデザイン(欧州風のマウスピースをあしらった、皮膚を思わせるパンパイプ)に加え、エッセイが精巧なスリーヴ内に同封されている。そのエッセイの要旨は以下の通りだ。『西洋的解釈による"本場の"文化への偏愛である異国趣味(Exoticism)というものは多くの意味で疑わしいが、西洋元来の文化は「崩壊して行き詰っており、そこから抜け出したいと思っても、どうすればいいのか分からない」という感覚に根付いた、実に文化的な現象である』。こうした考えは非常に繊細な事柄かもしれないが、Don't DJはウィットと大胆さをもって颯爽と対応しており、その過程で素晴らしい音楽を生み出している。 そうしたコンセプチュアルな一面が無くとも「Authentic Exoticism」は素晴らしい作品だ。異国情緒溢れるみずみずしい音楽であり、瞑想的かつグルーヴィー。即座に心が和んで、完全に異質。本作の液体的なポリリズムは伝統的な西洋音楽の壁を乗り越える真の探求だ。それは、RAとのインタビューでBurnt Friedmanが多くのアーティストに訴えていたことでもある。その一方で、使われているサウンドは異国趣味を自己風刺しているような印象で、ウッドブロック、鳥やコオロギの鳴き声が渦巻くコミカルなジャングルを思わせる。簡素な響きではあるが、そのサウンドは本作に鮮烈な雰囲気を作り出し、そうした象徴的な音素材が持つ力の利点を証明するものとなっている。「Authentic Exoticism」は作品のテーマを見事に体現しながら音楽とアイデアを効果的に融合させた驚くべき1枚だ。
  • Tracklist
      A1 Savanna Siesta A2 Savanna Sundown B1 Southern Shore B2 Southeast Subterrane
RA