PLAYdifferently & Technique presents MODEL1 In-store Demonstration

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  • Richie Hawtinと、Allen & HeathのDJミキサーの開発を手掛けたAndy Rigby Jonesが立ち上げた新しい機材メーカーPLAYdifferently。同社の第一弾モデルとして6月に発売予定のDJミキサーMODEL 1は、すでにDJたちの間で話題になっているアイテムだ。今回、お忍びで来日中だったHawtinたっての希望により急遽、本人主催のワークショップが開催された。渋谷のレコード・ショップTechniqueで開催された本イベントの模様とMODEL1の詳細を、Hawtinの取材コメントを交えながら紹介していこう。 直前のアナウンスにもかかわらず、Techniqueには多くのファンやDJたちが訪れていた。ワークショップはHawtinによるMODEL1の解説からはじまった。「既存の一般的なDJ向けモデルから脱却した、完全なプロフェッショナルなDJミキサー」とHawtinが説明するMODEL 1は、アナログ回路のみで構成されるDJミキサーで、6chのステレオ入力と2chのステレオAUXセンド/リターン、さらに2chのステレオアウト(マスター&ブース・アウト)を備えている。まず、目を引いたのは、ミキサーの各チャンネルにはロータリー・ミキサーのような2つのフィルター(ハイパス、ローパス)、さらにはSculping EQ(ミドルのパラメトリックEQ)が備え付けられている点だ。「このローパスとハイパス・フィルターはいずれも美しいカーブを持ち、音楽的なミックスができる。それに加えてSculpting EQを用いることで、どんなジャンルのレコードにも対応できるんだ。一般的な3バンドEQは、各帯域の周波数が固定されているから、レコードの聴かせたい、もしくはブースト/カットしたいポイントをうまく抽出できないことがある。でも、ミドルのEQに可変域を持たせることで、それを可能とした。より正確にサウンドをコントロールすることで、DJが持つフィーリングと一体化し、さらにクリエイティブなプレイができる。」付け加えるとSculping EQの可変域は700Hz~7kHz。これは一般的な中域よりも若干高めのセッティングだが、「ハウス/テクノにとって、これがベストかつスムーズな可変域。これ以上帯域が広いと正確さを欠いてしまう」とHawtinは指摘する。
    もうひとつ、このミキサーでこだわったのが音質の良さだ。デジタル/アナログの音源が混在する今のDJシーンにとってしばし問題になるのが、各ソースによる“音量差”だ。MODEL1は「どのソースを用いても正しい音量感を得られる」ようだが、これを具現化した技術について、Hawtinに説明をしてもらった。「開発でもっとも時間をかけたのがフォノ入力の回路だった。プリアンプはゼロから設計し、RIAAカーブにも微妙なチューニングを施して、ハウリングが起こりにくい特性を持たせている。レコードはどのソースよりも暖かな音色で音質的にも優れている。だから、フォノアンプを経由してマスターから出力される音を“MODEL1のノーマルな音”にしたかったんだ。ヘッドルームとノイズの少なさは、素晴らしいレベルに仕上がったと自負しているよ。」 このほかにもバックトゥバックにも適した独立した2ch分のヘッドフォン・キュー、デジタル音源でのプレイ時に有効な、歪みや倍音を加味するアナログオーバードライブ回路など、MODEL1ならではの機能を一通り説明すると、「これは従来のDJミキサーとはまったく異なるモデル。初見では使いこなせいから、時間をかけてミキサーの特性を理解し、楽器のように扱ってほしい」と、MODEL1に対するユーザーへの理解を求めた。その言葉からはHawtinが“完全プロ仕様”として開発した、MODEL1への自信を感じ取ることができた。 続いて、Hawtinによるデモンストレーションが行われた。簡単に彼のDJセットアップを説明すると、Native Instuments Traktor ProとAbleton LiveをインストールしたMacBookを用いて、音声信号はAntelope Orionを経由してMODEL1へと入力。HawtinはMODEL1に加えてTraktor、Liveのコントローラーを併用してプレイするといったもの。観客に向けて、ブースの両サイドのスピーカーから出てくるサウンドは、デジタルでありながらも、まったく硬さを感じない空気感のあるものだった。デモ中、Hawtinのミックスのなかで耳を奪われたのは、フィルターの滑らかさだ。硬質なテクノ・トラックでフィルターを過激に操作してもピークが出過ぎず、とてもナチュラルなサウンドを出力していた。そういう意味でもテクノ/ハウスに特化したキャラクターを感じとれた。ただ、当日はデジタル音源のみでのデモンストレーションだったので、こだわったというアナログ音源でのリスニング・テストも体験したかったのが正直なところ。もし、Hawtinが言うように、アナログでも同じ音質を実現しているのなら、素晴らしいポテンシャルを持つDJミキサーと言えるだろう。デモンストレーションが終わると最後に「MODEL1を手に入れたからといって、僕と同じようなプレイができるわけじゃないからね」と、満員の会場の笑いを誘った。ワークショップ終了後も、Hawtinは会場に留まり、ファンやDJとの交流を楽しんでいた。談笑するHawtinをキャッチし、最後にMODEL1の名前の由来を聞いてみた。「僕がDJのテクニック学んだのはDerrick May。彼が活動するデトロイトは自動車産業から革命が起こった工業都市だった。その時代を代表する自動車が“Model C”という名前だったんだ。だから、MODEL1には新しいクリエイティビティ、新しい時代という意味を持たせているよ」
RA