Moodymann - J.A.N. / 5800 Cass Ave

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  • Kenny Dixon Jr.(KDJ)は時代や場所を超越した選曲をするDJだ。彼はイビザ中でかかるようなヒット曲を70年代のソウルジャムと全く同じように平然とプレイする。KDJの手にかかればどんな音楽も彼のサウンドに変わる。音楽制作においても同じことが言える。この20年間でリリースされたKDJの12インチをどれでもいいので聞いてみてほしい。今でもそのサウンドは新鮮なはずだ。ミシガンのアパレル会社Carharttとの一大コラボレーションから誕生した、彼の最新作となる7インチでもそのことが証明されている(7インチの他にレコードバッグやTシャツのコラボレーションも行っている)。今回、KDJが引っ張り出してきたのは"J.A.N."だ。片面プレスの12インチとして2001年にリリースされた11分間に及ぶトラックの短縮バージョンである。彼のディスコグラフィーのハイライトで在り続けている人気のトラックだが、本作ではエディットが施されている。 貴重なクラシック作品の短縮バージョンということに不満を言う人がいるかもしれないが、6分間にエディットされたこのバージョンでは少なくともダンスフロアにとって重要なパートが使われている。"J.A.N."の前半で使われているのは擦りつけるようなベースラインと不気味なサンプル、そして、そのグルーヴ上に展開される冷めたストリングスとコーラスボーカルだ。クライマックスを遅らせることで興奮度が高まっているので、オリジナルバージョンの取り止めのない気軽なアウトロがカットされていても、さらに強力な印象だ(とはいえ、RAには「良かった部分が無くなっている」という不満の投稿があった)。 "5800 Cass Ave"はデトロイトにあるCarharttの新店舗の所在地だ。ドリーミーなボーカルサンプルと遊び心に満ちたキーボードを基盤にした、じわじわと効いてくるトラックに仕上がっているが、"J.A.N."と比べると物足りなさを感じてしまう。ただし多くのトラックと比較してもそれは同じことだろう。今回の7インチはやはりAサイドにつきる。KDJのディスコグラフィーの重要作が再発されたのはやはり嬉しい。「もしかしたらあなたには....魔法しかないんじゃないですか」と語るのはトラックを通じて使われているスポークンワードだ(80年代半ばにPrinceにインタビューしたElectrifying Mojoの声を使っているところがニクい)。少し変わった今回のささやかな再発盤という文脈で見ると、このサンプルネタはいっそう面白く映るだけでなく、Moodymannのアーカイブを掘り返す行為は常に楽しいということを改めて認識させてくれる。
  • Tracklist
      A J.A.N. (Short Version) B 5800 Cass Ave