Kyoka - SH

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  • 日本人プロデューサーKyokaは7歳のときから既にカセットレコーダーを繋ぎ合わせてフェイザーやディレイのエフェクトを生み出していた。レコーディングと音作りのプロセスを解体していこうとする彼女の姿勢が健在であることは「SH」を聞けば分かる。収録された4曲には息を切らしたような音や木材が燃えるときのような破裂音が詰め込まれているが、故意にローファイ感を出そうとするようなナイーヴなプロデューサーの作品では決してない。むしろその逆だ。「SH」には徹底してデザインされた音楽が収められており、確固たる狙いを持ってサウンドの忠実度に変化が加えられたり、音源が厳選されたりしている。完ぺきな処理が施された本作では、無駄なディテールは一切存在しない(サウンドチェックやライブショウの間にレコーディングされた作品だとは思いもしないだろう)。 "Susurrus"は必要最低限の音数で隙間を多く取った脅威的なトラックだ。軽やかなパーカッションが針で突いているような静かな場面では特にそのことが顕著に表れている。多様な柔らかいヒスノイズが鳴らされる中、調子の悪い掃除機のような低音がときおり挿入され、各素材も的確に配置されている。しかしその静けさに油断していると"Smash/Hush"の恰好の標的にされてしまう。こちらではタイミングやペースを果敢に処理した実験的なアレンジにより騒がしく音がぶつかり合っているのだ(ボクサーがサンドバッグを叩いているかのようだ)。ダンスフロアに接近した"Hovering"では踊りたくてうずうずしてくる。そのサウンドはLivity Soundのビートトラックをジェダイの騎士がリミックスしたかのようだ。Raster-Noton作品の多くと同様、「SH」も感情に乏しい音楽に聞こえるかもしれないが、Kyokaが作り上げる完ぺきで熾烈な環境を好む人には聞き応えのある作品だ。
  • Tracklist
      A1 Susurrus A2 Smash/Hush B1 Hovering B2 Shush
RA