Immix Ensemble & Vessel - Transition EP

  • Share
  • リバプールを拠点に活動するImmix Ensembleは自身を「イギリス各地の革新的なミュージシャンとのコラボレーションを主たる目的とする新たなアンサンブル」と称している。彼らの最新作「Transition」を制作したのは同アンサンブルの発起人であるDaniel Thorneと、Tri AngleやYoung Echoに所属するブリストルのプロデューサーVesselだ。漠然とではあるが、ふたりの電子音響作品のテーマはテクノロジーを基盤にしており(プレスリリースには「各楽器は特定の時代と場所における最先端技術を私たちに垣間見せてくれる」と記載されている)、2014年の秋からテート・ブリテンとリバプール大学などでパフォーマンスが行われている。 チェロ、クラリネット、バイオリン、トランペット、オーボエ、軽やかなパーカッションが用いられる中、本作で顕著なサウンドはThorneによるサキソフォンだ。一方のVesselは主に繊細なテクスチャーと不穏な雰囲気を提供するに留まっている。彼が鳴らす軋む電子音、持続音、そして、ディストーションは、"What Hath Got Wrought?"ではクライマックスを彩っているが、"Battle Cry"では周辺部に潜んでいる程度で、"De Revolutionibus"や"Scope"ではあまり使われていない。 この音楽の中核を担うオーケストラ演奏は非常に魅力的で興味深い。ThorneはJohnny Greenwoodによる未解決の不協和音を彷彿とさせるかのように、サウンドを鋭く鳴らしては引き戻したり、漂わせたりしている(こうした要素がなければ調性の取れた作品になっていただろう)。アンサンブルとして面白いサウンドではあるが、Vesselのようにサウンドデザインに詳しいアーティストであれば、耳をつんざくような周波数を鳴らしたり、スタティックノイズを轟かせたりする以上のことができたのではないかと思わざるをえない。「Transition」は革新的とは言えず、発展途上の作品だ。
  • Tracklist
      A1 What Hath God Wrought? A2 De Revolutionibus B1 Scope B2 Battle Cry
RA