DJ Slyngshot - Ain't Got No Time

  • Share
  • 元Honest Jon'sの従業員Pietro Barbieriによって運営されるPlace No Blameの1枚目「Ain't Got No Time」にはドイツの新人DJ Slyngshotのトラックが2曲と、Barbieriの元同僚Howard Williamsが手掛けるプロジェクトJapan Bluesのリミックス2曲が収録されている。Slyngshotの2014年のデビュー作に引き続き、本作においてもラフな感覚が漂っている。デビュー作のカセットテープ「Sumn From My Heart」ではいくつかのサンプルによってグルーヴが生み出され、心地よく澱んだローファイサウンドが全体を包んでいた。 "Ain't Got No Time"は今年発表された中でトップクラスのハウストラックだ。しかしスタイルや感覚の面では純粋なヒップホップと言える。これまでSlyngshotはタフで存在感のあるドラムサウンドにセンチメンタルなピアノを混ぜるという勝利の方程式を打ち立ててきた(彼の「The Grand Piano」という見事なタイトルのEPではこの方向性がハッキリと打ち出されている)。"Ain't Got No Time"ではトリルされるふたつのコード、スクラッチ音、「くだらないことにつきあっている暇はない」とクールに言い放つ声が中心になってトラックが展開していく。ビートが入ってくるまではDJ Premierのショートトラックのようにも聞こえるが、Slyngshotはダンスフロアに適した4音ベースラインや重心の低いキック、手打ちのスネアを加えてデトロイト・ビートダウンに対するトリビュートトラックに変えていく。 一方、サイケデリックなダンスミュージックに特化しているのがJapan Bluesだ。日本のバンドColored Musicによる1981年の早過ぎたトラックをリミックスした"Half Deaf Pulse"(英語サイト)がその好例だ。原曲の素材に対して彼はダブワイズなアプローチを取っており、"Ain't Got No Time"を瞑想可能な躍動トラックに変化させている。"O Town"のリミックスではSlyngshotの原曲に勝る仕上がりだ。原曲のくぐもったピアノを取り除いて浮遊感のある絶妙に調整されたドラムブレイクに焦点があてられている。こちらでもスプリングリバーブを振るわせた「スーッ」という音が使われている。即席感のあるラフなトラックにはこのように嬉しい結果を生む可能性があるものだ。
  • Tracklist
      A1 Ain't Got No Time A2 O Town B1 Ain't Got No Time (Japan Blues Remix) B2 O Town (Japan Blues Remangle)
RA