Flxk1 & Ena - 749

  • Share
  • EnaとFelix Kの相性は最高だと言っていいだろう。どちらもドラム&ベースからキャリアをスタートし、ジャンルの辺境部分へと接近していく過程の中で突出した個性を持つ存在となった。以来、ふたりはBPM170に限らないダンスミュージックを制作している。Felix Kは数多くリリースを重ねるレーベルHidden Hawaiiを拠点にあらゆる路線を行き交う一方で、Samuraiの一員となったEnaはテクノ、アンビエント、そして、モジュラーを使った実験要素を取り入れている。彼らが初めて手を組んだのは943名義のもとレフトフィールド色の強いテクノを収めた12インチを発表したときだ。今回、再び手を組んだふたりはFlxk1 & Enaとして知的なロングセッションを実現している。 「749」ではプライベートなジャムセッションらしく方向性をひとつに定めず、極めて細かなサウンドプロセッシングと喘ぐようなブロークン・ダンスミュージックの間を行き交っている。深くハマっていく"C1"や幻想的な"A1"のような、ふたりがビートに取り組んでいるトラックでは、ドラム素材が霧の立ち込める深淵に落ちていきそうなほど希薄な印象に感じられる。機材から何かしら形になるものをひねり出そうと顔をしかめるふたりの姿が思い浮かぶ。ふたりが素晴らしいのは、トリッピーなソナー音を使った"B1"や、ハロウィンのように不気味な"C2"など全く異質な印象のものを扱っているときだ。EnaとKは土着的なものから極めて軽やかなものまで様々なテクスチャーを制作しているが、そのすべてがひとつのトラックに収められるときもあるようだ。 イメージが不明瞭な場面は機材好きや実験音楽好きには魅力的だろう。一方でビートを取り入れたトラックの陰鬱とした揺らぎは踊るよりも深く沈みこむのに適している。本作はFelix KがBlackest Ever Blackから出したEPやEnaの『Divided』に近い。確かな腕を持つふたりの革新者が揃って奇妙なサウンドを生み出そうとしている。その様子をうかがう機会として「749」も等しく興味深い。
  • Tracklist
      A1 Untitled A2 Untitled B1 Untitled B2 Untitled C1 Untitled C2 Untitled D1 Untitled D2 Untitled
RA