MM/KM - Have You Seen Them EP

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  • Mix MupとKassem Mosse(MM/KM)の音楽は特異なまでに削ぎ落されている。彼らのトラックでは頻繁に連続ブリープ音やいびつなサンプルなど、ばらばらの要素が放り込まれ、混ぜ合わされる。そのサウンドは強硬に感じられるものの、決して悲しい結果に終わることはない。「Have You Seen Them」は極めていびつな作品かもしれない。しかし、骨格だけで成り立つこのコラボレーションは同時に楽しいものでもある。ドラムマシンによるジャムセッション・トラック"Tane"ではスネア、キック、そして、ハイハットが一見ランダムに打ち込まれており、ひとつのループが綺麗に形成されることはない。ねじれた単発音やズレたリズムはミュージックコンクレートを思わせるが、滑り込んでくるカウベルやピッチを高くしたタムにより、忙しない雰囲気も同等に生まれている。 "Chorus Beach"でも同様の奔放さが感じられるが、"Tane"以外のトラックではこうした遊び心は影を潜めている。今回最もタイトなビートを形成しているのは、粘着性のあるベースラインと紙を破いたような音を立てるハイハットだ。"Chorus Beach"では鍵束のようにじゃらじゃらと鳴らされるタンバリンがハイハットとぶつかって互いに弾き飛んでいる。震えるドラム素材が整然と並べられる中、軽快なチャイムのメロディが楽観と哀愁の中間を揺らめいている。 "Watching Gischt"では冷徹なパーカッションを親しみやすいサウンドに組み合わせている。ベースラインは、模様の付いた生地の上でマイクが引きずられているような深い音だ。"Watching Gischt"では引き伸ばされたアコーディオンの音と大きくうねるキーボードの隣で音程の外れたホーンが弱々しく吹かれる。そうするとトラックはおかしな哀歌のような印象に変わる。"Tane"と同様、MM/KMがこの手の雰囲気を醸し出すと、にやにやと笑いながら陰鬱と戯れの間にある境界線を曖昧にしようと考えているふたりの様子を思い浮かべてしまう。
  • Tracklist
      A1 Tane B1 Chorus Beach B2 Watching Gischt
RA