- 「Multi」はPassarella Death SquadのDanny Passarellaと彼自身の名を冠したレーベルによる、多様な要素を含んだ作品の第2弾だ。第1弾を飾った「Videodrome」はDavid Cronenbergによる1983年の幻覚カルト映画にインスパイアされたもので、PassarellaはPercと組み（英語サイト）、ダークなドローン・サウンドスケープ5曲を制作した。そして音楽に連動して、代表的なポルノ雑誌Penthouseのアーカイヴ写真を使ったエキシビションとTシャツコレクションが展開された。
「Videodrome」で重要なのはエロティカと"のぞき"というテーマだった。一方「Multi」のテーマはジェンダー、性的能力、アイデンティティとなっている。本作はもともとPassarellaとOliver Hoによる音楽コラボレーションとしてスタートし、そこからパフォーマンスと映像作品も生み出してきた。音楽面で言えば、「Multi」は「Videodrome」と同じくムーディーでシネマティックな領域を開拓している。
天使の吐息、空気が柔らかく漏れる音、そして、ウッドブロックの優しい打音を使った"Male"はとても繊細だ。大胆さが増した"Female"では、80年代のピアノスタブ、キックドラム、締め付けられてぎこちない音が一緒にまとめられて分厚い雰囲気を醸し出し、トラックはゆっくりと膨張した後、散り散りとなって完全に消え去る。"Back"は爪弾かれる弦の揺らめきと鈍い鼓動によってじっくりと燻られる楽器音を主体にしたトラックだ。そして今回一番不気味なのが"Forth"だ。そのサウンドは闇夜にアンビエントへ同化していくインダストリアルミュージックのようだ。
TracklistA1 Male
A2 Female
B1 Back
B2 Forth