Korg - minilogue

  • Published
    15 Mar 2016
  • Released
    January 2016
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  • アナログシンセに誰も注目していなかった時代はそこまで昔の話ではない。2000年代中頃にデジタルミュージックテクノロジーに対する世間の見方が変わり、今やアナログシンセは神格化に近い形で再評価され、大小を問わず様々な企業が急ピッチで需要に応えようとしている。現実を言えば、「温かさ」のようなアナログが備えるとされる魅力的な特徴は、基本的にはその不完全性が生みだすものなのだが、活き活きとしたシンセが欲しいのであれば、アナログの本格的なサウンドを手に入れなければならないというのはもはや社会通念になっている。
 そのようなアナログへの執着はもはや異常な域に達しているというのはもっともな意見だが、妥当な価格の非常に優れたシンセが登場しているのもまた事実だ。そして、これはその執着がプロデューサーの世界にしっかりと根付いたからに他ならない。しかも、このようなシンセには30年前にはかなり高額だった機能も追加されている。Korgが新たに発表した4ボイスのポリフォニックアナログシンセ、minilogue(54,000円)はその最たる例と言えるだろう。発売からたった数日でminilogueは音楽機材業界に大旋風を巻き起こし、その称賛の声は耳をふさぎたくなるほど大きなものになっている。 その理由としてまず挙げられるのが、比較的安価なシンセとして筐体がしっかりと作られているという点だ。minilogueには本物のウッドパネルが採用されている。そして、すべてのパーツが簡単に交換できるようになっているので、投資が短期間で無駄になってしまうのではないかと感じている人も心配する必要はない。しかし、一度箱から取り出せば、筐体のクオリティについていちいち言うことはなくなるだろう。というのも、このシンセは、シンセの基礎さえ押さえておけば、すぐに演奏できるような製品だからだ。パラメータの大半には専用のノブが用意されており、おそらくマニュアルを読まなければならないのは、シーケンスのエディットを細かく学ぶ時だけだ。 このシンセの一番の売りはオシレーターだろう。オシレーターは2基備わっており、ノコギリ波、三角波、矩形波が備わっている各オシレーターは、通常は使わないレンジまで出力できるようになっている。サウンドはクリーンで粒立ちも良く、ミックスに組み込めるサウンドを簡単に得られるが、パーフェクト過ぎて非人間的に感じることはない。minilogueの真価を本当の意味で理解できるのは、各オシレーターに備わっているSHAPEノブを変化させる時だ。このノブを回すと、多種多様なハーモニクスが得られ、煌めくようなチリチリとした高域のサウンドと共に、低域が立ち上がってくるのも聴こえるため、自分が取り組んでいるサウンドに豊かなキャラクターを加えることが可能だ。たとえば、パッドを分厚くしたい、またはリードにかすかな不協和音を重ねたい場合は、このSHAPEノブを回すだけでOKだ。そして、そこにもう1基のオシレーターを追加すれば、その可能性は飛躍的に高まる。コードを押さえながらSHAPEを変化させれば、周波数帯の中を複雑に動き回るサウンドが確認できるだろう。ここにサウンドを視覚的に確認できるオシロスコープを組み合わせれば、これらのシンプルな操作によって、このシンセが限られた機能から数多くのサウンドを生み出せることに気付くはずだ。サウンドデザインは必ずしも複雑なモジュレーションが伴うわけではない。シンプルな波形の少し変化にも大量の可能性が秘められているのだ。
    もうひとつ特筆すべきは、2基目のオシレーターに同期、リング&クロスモジュレーションに加え、2つ目のエンベロープジェネレーターを使用して設定できるピッチエンベロープも備わっているという点だ。リング&クロスモジュレーションはオシレーターのピッチを高くして金属的なハットのようなサウンドを生み出す時に最適で、多種多様な透過性の高いベルトーンも生み出せる。また、ノイズジェネレーターが備わっているオシレーターのMIXERセクションも無視できない。各オシレーターのヴォリュームは、それぞれのモジュレーションに直接影響するようになっている。フィルターは2ポールと4ポールで切り替え可能で、使えるタムやスネアを生み出すのには十二分だが、その本領が発揮されるのは低域だ。また、KEY TRACKも用意されており、キーボードでフィルターのピッチを効果的に変えることが可能なので、ジャングルのバウンシーなベースラインの手弾きも簡単に実現してくれる。 エンベロープとLFOは平均的だが、価格とサイズを考えれば文句はない。LFOは自己発振が可能で、SHAPEを変化させる時に非常に面白い効果をもたらす。複雑な揺れが発生し、2つ目のエンベロープジェネレーターを使って、LFO、フィルター、ピッチに変化を加えることも可能だ。これらのアサイン先をすべて同時に使い、エンベロープの設定を変化させれば、数多くのパラメータに連鎖反応を起こすことも可能だ。
    連鎖反応という意味では、リアルタイムジャムでパートを組めるminilogueの16ステップシーケンサーもかなり本格的なエディットが可能で、Sonic Stateが最新のレビュー映像で指摘しているように、4つのパラメータを同時に変化させるモジュレーションソースとしても使用できる。モーショントラッキングも備わっているため、時間軸で変化するマルチレイヤーのシーケンスも簡単に組める。また、シーケンサーのレコーディング時にノブを変化させれば、minilogueはその変化をすべて記憶するが、この機能は、これまでのどんなアナログ機材よりもサウンドを「活き活き」とさせるように感じる。たとえば、ホワイトノイズの16分音符のアタックとディケイの変化など、非常にシンプルなシーケンスも面白いハイハットパターンにしてくれる。また、ノイジーで歯切れが良く、使っていて楽しいディレイも備わっており、ディレイタイムを変化させれば、LFOのようなより一般的なソースを使用した場合とは違うピッチの変化も加えられる。 シーケンサーのステップとして機能するボタン群はVOICE MODEの切り替えにも使用する。各モードは特定の機能に優れた様々なボイシングがアサインされており、たとえば、UNISONはEDMで使い勝手が良さそうなパワフルなリード、MONOはベースサウンド、ARPはその名前の通りアルペジエーターに向いている。また、VOICE MODE DEPTHノブを変化させれば、各モードは更なる機能にアクセスできるようになっており、たとえば、Monoにサブオシレーターを加えたり、Chordのトーンに変化を加えたりすることが可能だ。もちろん、このパラメータはモーションマッピングが可能なので、CHORDで非常に複雑なハーモニクスの変化を加えたり、ARPの進行方向を変えたりすることも可能だ。
 minilogueにはアルバム1枚分に相当する豊富なサウンドが備わっているのは明確だ。しかも、操作が非常に簡単なので、演奏中は色々とノブを触りたくなるだろう。minilogueはそのようなインタラクションを引き出すようにデザインされているので、自分の個性を簡単に反映させられる。minilogueはこの価格帯としてはこれ以上望めないほどの数多くの機能とサウンドが備わっているシンセだ。 Ratings: Build Quality: 4.1 Cost: 4.8 Versatility: 4.2 Ease of use: 4.3
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