Lurka - Ritual Dingers

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  • 手軽にストリーミングできるオンラインサービスが数多く存在する今、自分で制作した音楽を既存のレーベルを介さなくても不特定多数の人に聞いてもらえるようになった。そんな状況におけるレーベルの存在意義はどこにあるのだろうか? Hotlineはその答えを音楽の提示方法に見出している。「レーベルは音楽スタイルや意思表明を提示するプラットフォームとして機能している。サウンドとビジュアルの両面でリスナーとコミュニケーションを取る手段なんだ。そうすれば、俺たちのサウンドやメッセージに共感してくれる人たちと一緒にコミュニティを作れる」。フルカラーのカバーに折り込まれるスリーヴノートから、実在の電話番号を使ったプロモーションまで、ひと手間もふた手間もかけるDIY精神の根底には、レーベルを主宰するDan Daviesのそうした意志が流れている。レーベル通算11枚目の12インチを手掛けたLurkaも以前からコミュニティの一員として活動してきた。エンジニアでもある彼が生み出すサウンドは分離が良く、必要なときに必要なだけ鳴らしているような極めて無駄のない音像をしている。 Boards Of Canadaを彷彿とさせるシンセのメロディからスタートする”Ritual Dingers”は、キックに重ね合わせた重低音ベースと、ハットやリムショットといった中高域のドラムパートを交互に抜き差しすることで小気味よいグルーヴを生んでいる。素材の抜き差しだけでこれほどのダイナミズムが生まれるのは、周波数帯域ごとの対比バランスが優れているからだろう。ダンスフロアへの意識がより明確に表れた”Choke”のビートとベースラインはUKガラージ、グライム、ダブステップをミックスして、そのいずれからも少し外れた場所に位置するグルーヴをひねり出している。この”少し外れている”というのが肝で、同トラックにはジャンルを問わずミックス可能な親和性があり、DJセットに変化をつけたいときにプレイすれば最大の効果を発揮するだろう。HotlineのYouTubeアカウントでも本作を聞くことができるが、12インチを手にとってアートワークも含めた表現行為すべてを存分に味わいたい。
  • Tracklist
      A Ritual Dingers B Choke
RA