Beat In Me feat. Rhadoo with Dreamrec

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  • 2015年もルーマニアをはじめとした東欧諸国からの活発なリリースが続き、最近だけでもFunk EのGreat Empty Circleや、Adrian Niculae aka. PrikuのAtipic、AudiothequeのAnakronik、Little HadoのMusic Is Art(第一弾リリースにはDenやKaitaro、そしてRaha and K-Sobajimaの楽曲も収録)など、若手アーティストによって多くのレーベルが立ち上げられており、ルーマニアンミニマルが一過性のブームではなくジャンルとして完全に定着したと実感した。それだけに、改めてシーンを作り上げたRhadooのロングセットを聴きたいという人も多かっただろう。昨年もRPR SOUNDSYSTEMの一角としてRaresh、Petre Inspirescuと共に来日していたものの、やはりRhadooの独特なスタイルは片鱗しか味わうことが出来なかったこともあり、この日への期待は高まるばかりであった。会場は恵比寿リキッドルームということで、音量・音質共に楽しめる要素が勢揃いだ 早速メインフロアに入ると、ブース後方と左右の3カ所に映像が投影されており、異世界のようなムードを醸し出していた。樹木や砂といった自然をモチーフとした映像が、じわじわと繊細に変化する様はまさにルーマニアンサウンドの視覚化。ときにVJは激しい映像の移り変わりに音への意識が阻害されるような感触を抱くこともあるが、さすが[a:rpia:r]クルーとも長く付き合っているDreamrec VJが手がけるだけあり、音と映像の相互作用が実感できた。 オーガナイザーでありメインのオープンDJを務めたRahaは、潜りすぎない一定のテンションを保ちながら時間をかけてフロアを作っていく。近年ますますルーマニアをはじめとした東欧系のミニマルに取り入れられている、ブレイクビーツライクな展開も交えつつも集まる人々をコントロールし、ロングセットに臨むRhadooにバトンを渡した。 気づけばリキッドルームの1Fも禁煙となっており、それもあって1Fはバーの周りよりもフロアに意識が向いていると感じた。もしくは、2Fのバー前が喫煙としばしの休憩を目当てとする層の受け皿となっていたようで、ちょうどいい具合に人の流れが生まれていた。2FリキッドロフトではJan KruegerやLowtecを招致するなど都内で活躍するARTEMISクルーの一員P-YanとYasuがプレイ。B2Bで珠玉のミニマル・ディープハウスを交互にかけつつ、二人のキャラの差異も手伝って1Fとは対照的なゆるやかでリラックスした雰囲気を保っていた。間口を広げつつもサウンドに妥協なし。続くはWOMBにてTresvibesを主催するPi-ge、Satoshi Otsuki、Kikiorixが登場し、充分に空気が出来たロフトにさらなる安定感をもたらす。3名体制でありながら息の合ったハウシーな展開は、RaneのロータリーミキサーMP2015の質感と相まって、下のメインフロアとはまた違った豊かなグルーヴを生み出していた。 Rhadooはミニマル一辺倒ではなく、ディープハウスとの中間のようなサウンドも披露しつつ、徐々にパーツが抜かれていくように進行。ウワモノひとつだけでも刺激を感じてしまうようなロングタームで焦らす展開は、Rhadooだけの武器ではないものの、やはり彼がやると一際スリリングだ。無駄な展開やフレーズに阻害されることなく、ループ感の強いトラックの組み合わせることで、オーディエンスが時を忘れられるような理想的なフロアが出来上がっていた。ただ、「踊れるか否かのギリギリ」を攻めるような、光も差さないほどディープなミニマルへの転換も正直期待していたのだが、メインフロアの熱量が終盤まで途切れなかったこともあり、Rhadooも空気感をキープしきったDJでそのままフィニッシュ。まだまだ先があるような気もしたものの、充実した一夜を楽しむことが出来た。 Rhadooの真骨頂である単独ロングセットだけでなく、専属VJとも言えるDreamrec VJを招致したからこそ実現できた、欧州シーンのリアルな空気を少なからず届けてくれたパーティーだったと思う。過去に(クローズが惜しまれる)代官山Airにて開催されたBeat In Meでも、昨年にオーガナイザーRaha主導で[a:rpia:r]の3名が来日した際も感じたのが、他のテクノ・ディープハウス系のイベントでは見かけないような客層も、しっかりと音楽を求めてフロアで楽しんでいることだ。「誰でも歓迎」なパーティーは朝になると途端に失速してしまうことが多いが、このパーティーにはしっかりとロングセットの醍醐味を味わいに来ている客層がついていたと思う。個人的な意見だが、国内の(特にテクノ・ハウス系の)パーティーは内輪を囲むのに注力する一方で、客層を広げる術を見いだせなくなっていると感じることも多く、この日のようなパーティーはフロアの活気につられるままに楽しめるのが嬉しい。久々の刺激を求めてきた人にも、刺激に慣れてしまったと感じるような人にとっても、そうは巡り会えないようなスペシャルな時間となったはずだ。 Photo credit: Masanori Naruse