Tyler Friedman - Vulkalaunai / Wallouian

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  • Tyler Friedmanはターナー賞にノミネートされたOtolith Groupらと制作を行うなど、主にダンスミュージックシーン以外の場所で生計を立てている。彼がこのシーンにやってきたのは、Kontra-Musicに2枚のシングルを提供した2012年のことだ。そして、それに続く作品がつい先日届けられた。一見したところ、Friedmanのテクノスタイルは非常に基本的なミニマリズム(切れのいいサウンド、長めの構造、そして、その下でキックを鳴らす限り、変なことをしても大丈夫だという信念)に従っており、今だと少し古くさい印象だ。しかし、彼は特徴的な手法でそうした約束事に徹底して則っているため、その音楽は流行とは関係なく浮遊していられる。 本作の内容から判断するに、Friedmanはこの数年間を自身の腕を進化/深化させるために費やしてきたようだ。収録トラックの尺はさらに長くなっている他(どちらも20分あたりをマークしている)、テクスチャーはより豊かに、ムードもさらに奇妙になっている。本作は昨年のLP『Ccb: Bb: Bbb: Jj』と対になる作品だ。どちらの作品においても、細胞増殖のように不規則ながら一定のパターンを持って膨張収縮するシンセのテクスチャーが駆使されている。しかし、今回のFriedmanが特に探求しているのは、みずみずしい真夜中のムードだ。 深海へ颯爽と飛び込む"Vulkalaunai"では、彼方から聞こえてくるシンセの音色が、奇妙な生物を宿した大きな岩礁のような構造へ構築されていく。かなり海中深くへ下降していくが、軽めに打たれるドラムが海面へのライフラインとしての役割を果たしている。より複雑さを増しているのが"Wallouian"だ。鐘のような音色の大群が柔らかな響きを奏でたかと思えば、突如、高速でバラバラになっていくような印象に変わる。それはまるで低速度撮影の中で何かが崩壊している音を耳にしているかのようだ。トラックは再び高密度になって突発性を増していく。そしてドラムパートによって、神経質ながらしっかりと統制されたエネルギーが膨らんでいく。同トラックはピークを迎えると、強烈に意識を攪乱する巨大空間へと至る。ミニマルの教義に忠実な彼は、従来の音楽が持つ物語性を無視して、より曲がりくねった路線に進むことが多い。これほど壮麗な音楽は、我を忘れて没頭するに相応しい喜びに等しい。
  • Tracklist
      A Vulkalaunai B Wallouian
RA