Renato P - Untitled EP

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  • Must Have RecordsのボスJay Simonは強い信念を持つ男だ。ジョージア州アトランタのプロデューサー/DJである彼が支持するソウルフルなアナログハウスは、流行り廃りに全く関係ないものの、見逃されがちなサウンドでもある。Simonはこれまでにレコードを3枚しかリリースしておらず、彼のレーベルが運営されている期間でいえば、1年に1枚にも及ばないペースだ。しかし、A&Rとしての彼の力量を図るには、Seven Davis Jr.によるEP「One」をチェックするだけでいい。ボーカルハウスのアンダーグラウンドヒットとして、このEPは彼のキャリアを押し上げた。Simonはリリースペースを保つことに気を遣っていない印象だが、Renato Pの「Untitled」ではクオリティが保たれている。無名のプロデューサーによる堂々たるデビュー作だ。 本作に収録された6曲のスタイルはそれぞれ異なるが、共通して指向しているのは、ドライブやダンスフロアを温めるのに最適な、ゆったりとしたブーギーハウスだ。Renatoによるディミニッシュジャズコードには悲哀や哀愁といった感覚があり、重心の低いドラムサウンドには無意識に頭を上下させられる。しかし、この手の音楽は数多く存在する。そんな中、本作を面白く保っているのが、洗練さの欠如だ。"Response"では、メロウな8音コード進行とRenatoの力強い左手の指使いがリスナーを惹き込む。Moogの太いベースを即興演奏し、絶妙なブレイクビーツとボーカルサンプルによるアレンジを施した後、そのすべてを削ぎ落して極上の響きを実現する。それはまるで最も素晴らしく演奏されたライブジャムのようだ。 収録曲の多くではRenatoのキーボードスキルが強調されているが、"Fireworks"はじっくりと展開する抑制されたハウストラックとなっており、Moominの"Time Circle"や不朽の名作"Deep Burnt"と同じ系統にある。本作を締めくくる"Yes I Do"のヒップホップビーツでは、MPCによる角張ったドラムプログラミング、ローズ、そして、ピッチダウンしたブラジル系ネタを使ったアレンジによって、J Dilla信者としての彼の一面が明かされている。「Untitled」によりRenatoはK15やJay Daniel、Budgieといった数多く台頭している若手プロデューサーのひとりとして位置づけられる。彼らはスタジオで膨大な時間を過ごしているのだろうが、ブーギーに傾倒した爽やかなハウスの響きにそんな気配は感じられない。
  • Tracklist
      A1 Havin' Fun Again A2 Response A3 Change The Mood B1 Fireworks B2 Lookin' 4 Jazz B3 Yes I Do
RA