- Lick My Deckはその豪快なレーベル名に比べ、非常に上品な音楽を発表している。2007年に設立され、ロンドンを拠点に運営されている同レーベルの最も印象的な作品は、卓越した技巧で知られるプロデューサーから届けられてきた。その中にはIon Ludwig、Petre Inspirescu、Bruno Pronsatoなどが含まれる。Thomas Melchiorも同レーベルと長く関係しているミニマルアーティストだ。今回、彼は最新12インチ「Tracking The Psyche」と共にLick My Deckに帰ってきた。2月の「The Return Of The Cosmic Kids Vol2」に続き、Melchiorのトレードマークである引き締まったスタイルを追っている人たちが気に入りそうな、魅力溢れるハウストラック3曲を通じて、本作でも輝かしいサウンドが提示されている。
Melchiorの明瞭なグルーヴ感覚が「Tracking The Psyche」上で非常に際立っているが、その内トラック2曲では色彩豊かな雰囲気の方が前面に押し出されている。"Right Of Passage (The Induction)"では、坦々としたベースライン、リバーブをかけたボーカルの断片、静かなアルペジオのようなサウンド以外に使われている要素がほとんど無く、陶酔感に溢れる優雅なトラックに仕上がっている。11分間に及ぶ"Let Go"では分厚いベースラインとどっしりとしたキック（前半部分でしか使われていないが）が含まれているが、こちらもおかしなことにアンビエント的な印象になっている。"The Ritual"では聞き取りにくいにも関わらずキャッチーなボーカルと複雑なベースラインがフィーチャーされ、本作で最も高い万能性を持つトラックになっている。「Tracking The Psyche」はMelchiorのファンであれば迷うことなく手に取る1枚だ。
TracklistA1 Right Of Passage (The Induction)
A2 The Ritual
B1 Let Go