Treatment - LP

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  • 一般的なイメージに反し、ミニマルハウスシーンで活動する人たちの多くはそれほどミニマルをプレイしない。Treatmentとして、音楽制作、パーティー運営、DJを共に行い、ベルリンで多くの信頼を集めるBinh NguyenとOnur Özerには特にそれが当てはまる。どちらかのDJセットを聞いてみてほしい。彼らのミックスには、ハウスと同様のヘビーなスウィング感や、ZipやNicolas Lutzといった同シーンを代表するトップクラスDJのサウンドに特徴的なグルーヴ感覚があるが、耳にすることになるのはハウスよりもテクノやエレクトロだ。 しかし現在に至るまで、NguyenとÖzerのエレクトロ回帰嗜好は彼らのソロ作品にそれほど表れていなかった。Nguyenの作品は重低音ミニマルハウスを完全に土台としている。おそらくそれは、ベルリンの会場Club Der Visionaereに彼が長らく携わってきたからだ。一方で、過去にこだわらず機能性を優先してきたÖzerだが、最も知られているのは彼が00年代後半に数多く発表した攻撃的なテックハウスだろう(彼の路線変更を考慮すれば、そうした大量のトラックは彼にとって忘れ去られたい過去に違いない)。 ふたりがクラブでの機能性をほとんど気にかけていないのはTreatment名義の活動で証明されている。昨年リリースされた魅惑の2曲入り12インチ「Treatment」は、現行のハウスを限界まで削ぎ落してループにしたサウンドだったが、これまでのところ、クラブでそれほどプレイされていない。そして、シンプルに『LP』と名付けられたTreatmentのファーストアルバムもDJを意識して制作されていない。本作は最初から最後まで完全にエレクトロだ(しかもアブストラクトなタイプのエレクトロだ)。収録トラックの多くはダークかつ空間的で、澱んでいて時折ざらついた倍音に複雑なブロークンビーツが組み合わされている。最もクラブでプレイされそうなのは比較的アップビートな"B1"と"C2"だ(最近のZipのプレイを聞いている人なら、"B1"を既に耳にしているかもしれない)。"B2"、"D1"、"D2"にはスペーシーなメランコリアが漂い、本作で最も内省的な瞬間が提供されている。 こうしたエレクトロ路線にNguyenとÖzerが進んだのは、理に適っているように思える。レコードディカー/DJとして、今やふたりは何年もこのサウンドに没頭しているため、彼らの作品にその点がハッキリと反映されるようになるのは至極当然だ。『LP』を全体的に見た時、首尾一貫した入念な作品というより、アイデアの断片を繋ぎ合わせたパッチワークのような印象を受ける。コンピューターを使わないライブレコーディング手法(そこでは直観的なアプローチが重要となる)が影響していることは間違いない。フォロワーが諸手を挙げて喜ぶのはもっとDJフレンドリーな作品だということをふたりはハッキリと分かっていながら、アイデアの断片を2枚組のアルバムとして提示したことは賞賛に値する。安易ではないものに彼らは挑んだ訳だが、彼らと同じフィールドで活動するアーティストたちはそのようなリスクを冒したりしない。幸い、彼らが取ったリスクは功を奏したようだ。
  • Tracklist
      A1 Untitled A2 Untitled B1 Untitled B2 Untitled C1 Untitled C2 Untitled C3 Untitled D1 Untitled D2 Untitled