Compuma meets Haku - The Reconstruction of “Na Mele A Ka Haku”

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  • ある事柄を認識する時、その事柄に紐づけられる様々な情報が喚起される。例えば、「パーカッション」という言葉を目にした時、どのように使われるのか、どんな音が鳴るのか、どんな見た目か、といった情報が「パーカッション」という言葉に紐づけられる。そうすることで単なる直線と曲線で出来た模様に過ぎない文字列を、特定の意味を持つものとして捉えることになる。人によって特定の意味が異なる場合もあり、それが文化の違いの表れとなることもある(「4」という文字を禁忌とするなど)。認識が共通することはコンテクストの共有である一方で、そのコンテクストが既成概念となりマンネリの原因になることがある。異なるコンテクストから事柄を捉えなおす行為が新鮮な印象を生み出すのはこの時だ。 EM Recordsによって再発された1975年のアルバム『Na Mele A Ka Haku (Music Of Haku)』におけるシンセサイザーを用いたアプローチがひと際独特に感じられるのも、ハワイの音楽と電子楽器の組み合わせという普段耳にすることのないコンテクストだからだ。そんな同作の素材がCompumaの手によって再構築されたのが「The Reconstruction Of “Na Mele A Ka Haku”」である。ここではダンスフロアの視点からこの12インチを捉えてみたい。 Aサイドに収録された”re-edit”では、アルバムに収録されている”Introduction”で降り注いでいたシェパードトーンから作ったループにナレーションを組み合わせて序盤の空気を演出している。軽めのビートが坦々と打ち込まれる中、ディレイをかけた声の断片が大きく起伏することで徐々に浮遊感を増していく。中高域に意識が惹きつけられる分、途中で投下されるずっしりとした重いベースラインのインパクトがコントラストとなっており、その心地よさに拳をグッと握りしめたくなる。様々な電子音を追加することで陶酔感を高めながら、途中でスネアとハイハットを差し替える展開には、フロアの盛り上がりを期待してしまう。同トラックの後半部をビート主体にしてBPMを大幅に落とした” 悪魔の沼 Bonus Beats”では、キックの減衰を長くしてタメを効かせた酩酊グルーヴが轟いている。派手な展開は無いがツールトラックとして重宝しそうだ。オシレーターを存分に発振させたインタールード” ダミーOSCar Part 3”を挟み、最後を締めくくるのは” 沼 SCREWED Reprise Dub”。”Bonus Beats”を小刻みに開閉するフィルターにくぐらせたようなぬかるむビートの中から、微かにナレーションや電子音がうめいているのが聞こえてくる。 『Na Mele A Ka Haku (Music Of Haku)』のライナーノーツによれば、アルバムに収録された曲のいくつかはもともと劇作品のために制作されたそうで、シンセサイザーに加え、鳥の鳴き声、ナレーション、ジェット機の音、細かな破裂音などをコラージュして、ミュージックコンクレートのような不思議な異世界を描き出している。そうしたコンテクストから素材を切り離し、ダンスフロアで機能するかどうかの基準で捉えなおした本作も、やはり新鮮な興奮をもたらしている。
  • Tracklist
      A Compuma re-edit B1 悪魔の沼 Bonus Beats B2 ダミーOSCar Part 3 B3 沼 SCREWED Reprise Dub
RA