Portable - Lovers & Players

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  • Paul LoraineのレーベルRhythm Cultは、Stephen Beaupréによる高揚性の強いメロディから、Deadbeatによるダンスフロア仕様のダビーなジャムトラックまで、一風変わったハウスに門戸を開いてきた。その流れで言えば、Alan Abrahams(Portable)は同レーベルにぴったりだ。彼のトラックはライブパフォーマンスと同様、カリスマ性があるからだ。彼は使い古された形式を再び新鮮に感じさせる術を知っているだけでなく、最小限に抑えたミニマルな音楽に壮大な特性を吹き込む技巧を備えている。このふたつの面は『Lovers & Players』の至るところで感じられる。本作はこれまでのRhythm Cult作品で最も強力なレコードかもしれない。 Aサイドに収録された11分間に及ぶ"Reeva Numbers"は、AbrahamsがPerlonに提供しそうな、彼がよくやる路線のトラックだ。ディープかつミニマルで、悪びれることなく反復している。彼の特徴であるループ性が何よりダイナミックで、リズムが頻繁に取り除かれ、予想を超える勢いで戻って来る他、暖かなオルガンによるメロディがけたたましい機械音に人間らしいタッチを与えている。 "Only Human"ではソウルフルなキーボードが再び用いられており、ソカのようなリズムが展開され、Abrahamsによる完ぺきなボーカルが頭上に舞い上がる。活性の高いリズム上に抑制したDepeche Modeスタイルのボーカルという、ギリギリのところで成り立っているような構造をしている。Abrahamsが素晴らしいボーカルを披露しているトラックを決定づけているのは、この点だ。本作は"Moving, Trains & You"にて幕を閉じる。このトラックでは、少しオーケストラのように感じられる壮大なコードが進行する中、つんのめったドラムサウンドが転がっていく。Abrahamsの音楽がかすんでしまうほどの壮麗さだ。今回収録されたトラックはどれも前作とは著しく異なっているが、ダンスミュージックシーンで独自の個性を持つアーティストにより生まれたトラックであることに違いはない。
  • Tracklist
      A Reeva Numbers B1 Only Human B2 Moving Trains & You
RA