Kez YM - Solidity EP

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  • 狭い島国の日本ではなくより広い活動の場を求めて、2014年にベルリンへと活動拠点を移したKazuki YamaguchiことKez YM。それから1年半が経過しているが、Facebookなどの公式サイトから状況を察するに、Faces RecordsやMCDEのレーベルメイトと一緒にパーティーに出演するだけでなく、ドイツやその周辺のヨーロッパ各国の大小のパーティーに単独でも出演するなどその存在は確実に求められているようだ。テクノだけでなくディープ・ハウスも浸透しているドイツなればこそ、彼の音楽性が上手く適合するのも自然な流れだったのだろう。 そして、DJとしての活動だけでなくアーティストとしての活動も再度活気付いているのは確かで、リリースを全くしなかった2014年から一転して2015年には既にYore RecordsやFaces Recordsから2枚のEPをリリースし、このCity Fly Recordsからは2年ぶりとなるEPで3枚目となる。その内容はKez YMの音楽に慣れ親しんだ人であればおおよそ予想がつく、良い意味では期待通りにぶれる事のない黒光りする野性的なディープ・ハウスが中心だ。全身を揺らして魂が振動するような勇ましいDJプレイをするKez YMだが、そんな勢いが反映されているのが"Eagle Eye"で、抜けの良いパーカッションによる弾けるグルーヴに対してマイナー調の内向的なシンセコードで湿っぽさを演出し、ボイスサンプルも交えて黒人音楽由来のファンキーさを爆発させたハウスは見事だ。その一方で生々しく荒削りなダウンビートを用いた"Bump Into The Sky"は、Kez YMにしては珍しいスローモーで粘り気のある曲構成だが、それは初期のMoodymannを思わせる汚れた中から官能的な美しさが噴出するようなデトロイト・ハウスと共通している。裏面にはハウスのイーヴンキックと熱気溢れるボイスサンプルが反復する中で華麗なピアノコードがジャジーさを発す"My Joy"や、綺麗な上モノと跳ねるように弾力のある4つ打ちですっきりと洗練されたファンキーなハウスの"Spiral Traffic"と、こちらは過去の作風を踏襲しており安定した品質だ。どれも決して新鮮味のあるハウスでもないしアーティストの性質を刷新する訳でもないのだが、しかしパーティーでこそ映える機能性重視の躍動的なダンスミュージックは、やはりKez YMの本質がやはりDJにある事を痛感させるのだ。
  • Tracklist
      A1 Bump Into The Sky A2 Eagle Eye B1 My Joy B2 Spiral
RA