Slow Riffs - Gong Bath / Virgo Dub / Peace Arch

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  • 今回、Mood Hutがアンビエントミュージックに足を踏み入れていなければ、非常にもったいないことになるところだった。それは単にMood Hut(ムードの小屋)という言い得て妙な名前が付けられているからだけではなく(この名前を聞くといつも、蒸気が充満するサウナと、熱く焼けた石にかけられる水の音、そして、リラックスした吐息を思い浮かべてしまう)、彼らのおおらかなハウスにはどこか常にアンビエントとの類似点があるからだ。そのようにゆったりとした濃縮グルーヴには、優雅に静まり返った空気が流れており、その感覚はジャジーでジャッキンなトラックにおいてもどこかかしらに引き継がれている。Slow Riffs(aka Ian Wyatt / Local Artist)によるトラック3曲を収録したMood Hut初となるアンビエント12インチでも、そうした世界観が実現されており、彼はこの機会を利用して瞑想的で、もしかしたら「活気付けられる」とでも言えるであろう特性へと深く潜り込んでいる。 "Gong Bath"、"Virgo Dub"、そして、"Peace Arch"というトラックタイトルを見ると、本作にはニューエイジに対する親和性があるように思えるが、Slow Riffsにはそれほど哀愁は無く、より抽象性が高くなっている。これらのトラックは、関連性の無いループが覆い被さることによるサウンドの干満や、テクスチャー、そして、ニュアンスを基調にしている。水中で酩酊しているような"Gong Bath"と"Virgo Dub"で、自然なサウンドと散乱するメロディが取り入れられる辺りに、Gasを思い浮かべるかもしれない。初期Mouse On Marsのダビーでフリーフォームな部分も比較対象になりそうだ。明らかに静けさが薄れた"Peace Arch"では、爽やかなチャイムのループと無秩序に弾けるドラムにより、突出した独自性を持つトラックを実現している。ハンドパーカッションが安定しているため、同トラックをDJセットに組み込むことさえ可能かもしれない。Slow Riffsの他作品は通しで聞くのに向いているが(それは完全に没頭して、長い時間をかけて吸い込むものだからだ)、だからといって、スピリチュアルな平穏が漂う本作限定の音楽性が効果を失うことは一切ない。
  • Tracklist
      A1 Gong Bath B1 Virgo Dub B2 Peace Arch
RA