Mariah - Utakata No Hibi

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  • Mariahの"Shinzō No Tobira"を教えてくれたのは、スイスのディガーであるLexxだった。彼は2012年にClaremont 56から発表されたコンピレーション『Originals Volume Eight』に同トラックを収録している。同コンピレーションには刺激的な選曲がいくつかあったが、最も意外で素晴らしかったのは、柔らかなドラムと上昇するメロディ、そして、解読不可能なボーカルをきらびやかに組み合わせた"Shinzō No Tobira"だった。この曲はもともと、1983年にBetter Daysというレーベルからリリースされた『Utakata No Hibi』の終盤にひっそりと収録されていた。『Utakata No Hibi』は、日本人ミュージシャン/コンポーザーであるYasuaki Shimizuが率いたエクスペリメンタルバンド、Mariahの6枚目にして最後のアルバムである。 『Originals Volume Eight』の発表よりも随分前から、"Shinzō No Tobira"はレコードオタクたちから切望されていた。Lexxが初めてこのトラックを聞いたのは、2009年にPrins ThomasがDJ Historyに提供した『Mystery Mix』でのことだった。Prins Thomasは日本に滞在中、『Utakata No Hibi』を入手していたのだ。彼は誰からこのレコードを受け取ったのかをハッキリと覚えていないのだが、『Utakata No Hibi』に関して調査をすると大抵、深い見識を持つ東京在住のレコードコレクター、Chee Shimizuに行きつく(彼は特異なエキゾティックミュージックに1冊丸々特化したを発刊している)。Shimizuには数年間、友人に渡すために『Utakata No Hibi』の在庫をヨーロッパに持ち運んでいた時期がある(余談だが、MariahのYasuaki Shimizuと彼は血縁関係ではない)。しかし最終的に在庫が底をつき、希少になった同アルバムの値段は高騰した。 今回、『Utakata No Hibi』を再発したニューヨークのレーベル、Palto Flatsの話に移ろう。彼らは同作品のライセンス取得について「厄介で複雑なプロセス」だったと語っている。これはおそらく控えめな発言だろう。というのも、日本の音楽のライセンスはとてつもなく難しいことで有名だからだ。そのため、多くの人たちがライセンスに挑んでは失敗をしてきたが、Palto Flatsは見事に同作品を手中に収めた。 "Shinzō No Tobira"が本作で最も輝きを放っているのは間違いない。しかし、この曲だけが特別な瞬間なのでは決してない。同様の非の打ち所がないドラムループは、1曲目の"Soko kara"でも聞くことができる。フォーク、ニューウェーブ、80年代における初期ジャパニーズポップを組み合わせた同曲の雰囲気がアルバム全体のトーンを設定している。 "Shisen"のように、いくつかの楽曲は日本の音楽が持つ伝統形式に沿っているように見え、その一方で、"Hana Ga Saitara"はニューウェーブの危ういサウンドを見事に取り入れている。しかし、本作は大部分において、独自に描き出した精工な世界に存在しているような印象だ。それはまるで、鎖国により何世紀も他国から切り離された日本文化が、1980年代のスタジオテクニックと衝突しているかのようだ。他にも、掻い摘んだドラムと細かく炸裂するマリンバによって騒がしくアレンジされた"Sora Ni Mau Maboroshi"や、"Shinzō No Tobira"がピアノコードで不意に終了した直後に柔らかな着地場所を用意する内省的なラストトラック"Shōnen"が収録されている。『Utakata No Hibi』は特異な80年代ジャパニーズシンセミュージックに病みつきのディガーにとって欠かせない作品であるだけではない。本作はより広範なリスナーによって聞かれるに値する普遍的なアルバムである。
  • Tracklist
      A1 Soko Kara A2 Shisen B1 Hana Ga Saitara C1 Fujiyū Na Nezumi C2 Sora Ni Mau Maboroshi D1 Shinzō No Tobira D2 Shōnen