- Tokenから発表されたInigo Kennedyによる『Vaudeville』(英語サイト)は、洗練され、高評価を獲得したアルバムだ。収録曲のひとつ"Requiem"は同アルバムにおいてスローかつディープ目のトラックだった。リリースから1年が経ち、Tokenは同トラックを4人のリミキサーに渡したのだが、仕上がった各リミックスにはユニークな名前が付けられることになった。その名前は彼らが提供する異なるアプローチを反映しているのだろうが、その内の3曲では原曲から極めて張り詰めたメロディが取り入れられている。中でも最もスピートが速く明快なのは、Efdeminの"Journey To The Stars Mix"だ。Kennedyのメロディをスムーズにし、クラップと警報音、そして、不安げなシンセリフをサイファイ的雰囲気に加えている。
それとは反対方向に進んでいるのがKangding Rayだ。彼が手掛けたBPM110の"Dies Irae Remix"では、土着的なドラムや催眠性のあるティック音、そして、精巧に削り出したノイズとフィードバックの塊が使われており、不思議な瞑想的感覚が生まれている。Regisの"Human Host"はじわじわと攻める濃密なリミックスだ。不気味なバックグラウンドアンビエンスで満たされ、長いブレイクに至ると原曲のメロディがずるずると眼前に現れ、さらに朦朧とした形へと捩じられながら変形していく。最後に控えているのはDasha Rushによる"Requiem For Humanity"だ。抽象的で夢のような展開を描くのが得意なRushのリミックスでは、どっしりとした簡潔なテクノのリズムを中心にして様々な素材が漂っている。そこへ加えられるのは、Kennedyのメロディをもとにして鳴らされる劣化したピアノの旋律や、行き先を見失ったことを非難するモノローグ、Rush自身による詠唱だ。リズムよりもムードに全体的な焦点が当てられているが、多様なリミックスをまとめた本作にとって素晴らしい結末となっている。
TracklistA1 Requiem (Efdemin 'Journey To The Stars' Mix)
A2 Requiem (Kangding Ray 'Dies Irae' Remix)
B1 Requiem (Regis 'Human Host' Mix)
B2 Requiem (Dasha Rush 'Requiem For Humanity' Remix)