Terepa - Terepa EP

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  • Kouhei Matsunagaがテレパシーを使って楽曲制作したのは「Terepa EP」が初めてのことではない。2008年6月11日、MatsunagaとPan SonicのMika Vainio、そして、AutechreのSean Boothはそれぞれ異なる場所で自分の機材を起動し、レコーディングを開始した。その過程で感想を伝えることもなければ、前もって打ち合わせをした訳でもなく、3人はテレパシー能力(より正確に言えば、偶然と音楽的直観が入り混じったもの)を頼りに制作を進めていった。そのレコーディングは、隙間を多分に含むミステリアスな作品『3. Telepathics Meh In-Sect Connection』としてまとめられ、2010年にリリースされた。Matsunagaの2回目の試みではスケールが増しており、Laurel Halo、Julia Holterを含む7人のミュージシャンが参加し、ロサンゼルス、ベルリン、大阪、パリでレコーディングが行われた。今回も再び豪華な参加メンバーだが、仕上がったトラックは非常に展開が少なく、そして、見事にまとまっている。 制作過程における偶然性を考えれば、本作の成功はポストプロダクションに拠るところが大きい。収録の2曲をミックスしたのが誰かは分からないが、ひとつの要素が他より優先されることのないように注意が払われている。それにより、複数の音楽作品を同時に聞いているような眩暈を起こす感覚が生まれている。"8th August 2014"のムードは控えめではあるが張り詰めており、一縷のバイオリンドローンと近距離でマイキングしたパーカッションに加えられる球体状のシンセは、UFOがステルス状態で飛行をしているかのようだ。数分後に噴出し始める低域を含め、奇妙に飛び出してくるサウンドには切迫した危機を感じるが、その危険が完全に表面化することはない。その代わり、トラックは次々と現れる薄気味悪い風景を潜り抜けいき、12分を過ぎる頃になると、パーティホーンが少しおどけた空気をもたらす。尺を短くし、よりダークにした"28th October 2014"では、時折、澱んだ空間から姿を現すきらびやかなピアノアレンジが特徴的だ。不安定なドローンに周囲を取り囲まれ、シュールに変容していく空間が生まれている。まるで音楽学校の練習部屋の窓脇を颯爽と過ぎ去っているかのようだ。
  • Tracklist
      A1 28th October 2014 B1 8th August 2014
RA