Rex Ilusivii - In The Moon Cage

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  • Vladimir Ivkovicは挑戦的な音楽で自身のDJセットに深みを与えていることで知られている。彼のDJを聞けば、知らぬまに奇妙な切り口の不協和な作品で踊っている自分自身に気付くことになる。彼はデュッセルドルフのSalon Des Amateursで長年レジデントパーティーを開催している他、故郷のベオグラードではカルト的な支持を獲得しており、その過程の中で自身のスタイルを磨き上げてきた。そのため、Ivkovicの新レーベル、Offen Musicが変化球的内容のレコードを皮切りに始動するのはそれほど驚きではない。 『In The Moon Cage』で焦点が当てられているのは、Rex IlusiviiやSubaとして作品を制作していたセルビアのプロデューサー、Mitar Subotićだ。しかし、そうした過去作品によりSubotićが人々の視線を集めることはないだろう。なぜなら、彼は1999年にスタジオを襲った火事により亡くなっているからだ。何か月も話し合いを重ねた末、IvkovicはSubotićの家族の承認のもと、彼のバックカタログに接することができるようになった。『In The Moon Cage』に収録されている未発表トラックが制作されたのは遡ること1988年のことだ。 本作の1枚目には4曲のトラックが収録されている。ひねりのある展開はどこか壮大で、Arthur Russellに似たスタイルにより異なる要素が徐々に挿入されていく。"Moon Cage I"には悲しげで、もはや哀歌的なムードが漂っており、東洋の歌声やクラシックなストリンス、そして、異世界のような電子音が用いられている。"Moon Cage II"では、一定の場所に留まることのない豊かなディテールが紐解かれている。ここではパーカッションや管楽器(おそらくディジリドゥーだろう)がミックスに加えられており、David Bowieの"Warszawa"と対を成すようなサウンドになっている。 "Moon Cage III"が描くサウンドスケープは、風が吹き荒ぶ何もない空間だ。一方、"Moon Cage IV"ではオーケストラの仰々しい突発音が周期的に鳴らされている。本作のCサイドには"Annex"バージョン2曲が収録されている。滴る水の音やアコースティックギターがトラックの序盤に浸透しているが、後半になると、あらゆる有機的なテクスチャーが吸い込まれていき、殺伐として不気味なビートレス状態へと変化していく(Dサイドにはエッチングがフィーチャーされている)。「In The Moon Cage」はSubotićのある一面を提示しているに過ぎない。どうやら、Ivkovicは大量の未発表音源を蓄えているようだ。近年、Ariel Kalma、Gigi Masin、Vito Ricci、Vangelis Katsoulisなど、数十年前の無名のプロデューサーが様々なレーベルにより発掘されており、彼らが手掛けた作品に事欠くことが無くなっている。そんな中、次にみんなが話題にするようになるのは、Rex Ilusiviiかもしれない。
  • Tracklist
      01. Moon Cage I 02. Moon Cage II 03. Moon Cage III 04. Moon Cage IV 05. Moon Cage - Annex 01 06. Moon Cage - Annex 02