Simo Cell - Cellar Door / Piste Jaune

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  • 気になっている人がいるかもしれないので言っておくが、Simo Cellという名義は2011年に話題になったJoy Oによるトラック(英語サイト)が引用元になっている。Livity Soundのサブレーベルに提供されたトラック2曲によって同名義はデビューを飾るわけだが、フランス生まれのDJ/プロデューサーである彼をほやほやの新人だとか、詳細不明の秘密兵器のように思ってはいけない。その逆で、Simon Ausselが初めてDJブースでプレイしたのは15歳の時で、彼は2010年にエレクトロニックミュージックのブログとプロモーション集団であるPhonographe Corpを設立したひとりである。そして現在は、Rinse Franceの番組であるFragil Musiqueのレジデントを務めている。今年の4月、彼はPur Simという名義を使うことを辞め、同名義で最後となるふたつのギグ予定と"Sicko Cell"へのリンクと一緒にFacebookでそのことを発表した(フランス語)。彼がこのトラックから名義を取ったことには頷ける。「Cellar Door / Piste Jaune」において、Simo Cellは808のディープな音鳴りとポストレイヴのダビーな光沢を用いて、ハイコントラストな英国産テクノの進化の系統にあるサウンドを反映しているからだ。 AusselはLivity Soundにとって初となる英国外のプロデューサーだが、彼の12インチはレーベルの音楽観にぴったりとハマっている。両トラックともに不気味なローエンドの鼓動とパーカッシブなシャッフルが広々としたアイソレーションタンクの中で展開していく。そのため、光が少しでも揺らぐことがあれば際どい幻覚を味わうことになる。"Cellar Door"は、跳ねたキックの周りを海底の音色がループするという大胆なオープニングを展開し、最初のドロップに至るまでに巨大に膨れ上がっていく。トラックの端々で鳴らされるビットクラッシュさせたディストーションにより、Ausselがローエンドを臨界点にまで推し進めていることが強調されている。また、動きのあるスネアパターンが圧倒的な周波数の周りを素早くダイブしている。まるでスネアが落ち着く場所が残されていないかのようだ。もしかしたら"Cellar Door"には「落ち着かない」という表現が最も適しているかもしれない。トラックで唯一一貫しているのは推進力のみだからだ。 "Piste Jaune"では上品なアレンジにはなっているものの脅威感は全く衰えていない。抑制された感じがいかがわしく、初めて夜遊びに出かける時の不信感に似ており、トラックはモノトーンなテクノで一般的なサウンド使いに留まっている。しかし、Ausselはそこへ緊張感と活力を注ぎ込んでおり、高圧力のグルーヴを絶妙に変化させながら、DJセットのどのタイミングでも機能するだけの切れ味を生み出している。「Cellar Door / Piste Jaune」は完全にユニークなサウンドではないかもしれないが、自分ができること、そして、自らのアイデアがどのような効果をもたらすのかをしっかりと理解したプロデューサーの制作工程を明らかにしている。
  • Tracklist
      A1 Cellar Door B1 Piste Jaune
RA