Nils Frahm - Music For The Motion Picture Victoria

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  • ドイツ人ピアニスト、Nils Frahmのもとに映画のサウンドトラックの依頼が頻繁に来ていても驚きではない。しかし、彼はそうした依頼をいつも断るようにしている。Frahmが『Victoria』のサウンドトラックを引き受けることにしたのは、クリエイティブ面での自由が与えられたからだ。監督のSebastian Schipperは、Frahmと長きにわたる彼のコラボレーターたち(チェロ奏者Anne Müller、ビオラ奏者Viktor Orri Árnason、エクスペリメンタルギター奏者Erik K. Skodvin)に、普段のどおりのやり方で音楽を制作できることを保証した。つまり、延々と何時間もインプロヴィゼーションして制作するということだ。そして、彼らによるアンサンブルがベルリンのスタジオで結成され、巨大スクリーンに映画をループ再生させながら、制作プロセスにより深く掘り進めていくようになった。 完成した楽曲は映画を元にしている点から完全に抜け出してしまう訳にはいかない。ピアノを使っていない"In The Parking Garage"や"The Bank"といった作品には瞑想的なムードがあり、映画の一場面に添えられるための音楽としてハッキリとその目的を成し遂げている。両曲とも悲痛で張り詰めたトーンの中、機能的で教訓的ですらある。DJ Kozeのシングル"Burn With Me"のエディット(気まぐれにスライスした歯切れの良いサイケデリックハウス)でもそうだったが、前述の楽曲よりもFrahmは彼独自のことをやっている時の方が面白い。 Frahmのピアノ演奏は非常に特徴的で私的であるため、サウンドトラックのように切り離されたものには上手く当てはまっていない印象だ。しかし、"The Shooting"やテープヒスにどっぷりと浸けこんだ"Them"(前後に滑るストリングスは孤独なスライドギターのようだ)のように、彼のピアノがリードパートを担当し、他のミュージシャンが引き立て役を担っている時は、映画とは独立したものとして格別に素晴らしく仕上がっている。どちらの楽曲も美しく、胸が張り裂けそうなほどの感情が渦巻いている。3分にも満たない曲長ではあるが、"Pendulum"は一度聞けば脳裏から離れなくなるだろう。弔うようなストリングスに不安な気持ちにさせられ、ハーモニウムのようなサウンドが鳴らされる中、Frahmが苦悩に満ちたベース音が突如、連続して投下したかと思えば、すぐさまトラック上から姿を消してしまうのだ。本作は重要作であるとは言えない。しかし、卓越した技巧を持つ人物により生み出された作品である。
  • Tracklist
      01. Burn With Me (Victoria Edit by DJ Koze) 02. Our Own Roof 03. A Stolen Car 04. In The Parking Garage 05. Them 06. The Bank 07. The Shooting 08. Nobody Knows Who You Are 09. Pendulum 10. Happy New Fear (Bonus track by Deichkind) 11. Marilyn Whirlwind (Bonus track by DJ Koze)