Orson & Skratch - Nucleus

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  • あるサウンドが最盛期を過ぎてしまっても、そのサウンドに変わらずこだわり続けるアーティストは称賛に値する。そうしたアーティストは、そのサウンドがどれだけ今の流れに即しているかなど関係無く、自分が好きなものが何なのかを分かっているからだ。Orson Sieverdingはまさにそんなアーティストで、デュッセルドルフにあるSalon Des AmateursでイベントVersionを始めた2006年以来(最初のゲストはMalaだった)、彼はドイツにおけるベースミュージックの主要な発信源のひとりだ。近年、彼と彼のパーティーはベルリンに拠点を移し、Tresorと同じ建物に入っている白いタイル張りの小さなクラブであるOHMにて、Swamp 81やHyperdubといったレーベルのアーティストを招いて一緒にプレイしている。この数年間、彼は同じくVersionと名付けられたレーベルを通じて、ダブステップにおける殺伐とした視点を提示している。 Versionのレコードは時代の逆行でもなければ、現代的な再解釈でもなく、ハッキリと時代の流れとは関係が無いように感じられる。「Nucleus」において、Sieverdingはドイツのベースアーティスト仲間であるSkratchとタッグを組んでいる(Hard Waxのスタッフであり、過去にVersionからリリースしているHopsと共にSkratchはイベントVersionのレジデントを務めている)。本作はVersionの5枚目にあたるレコードだ。そして、レーベルが初めて4つ打ちに取り組んだ作品でもある。タイトルトラックである"Nucleus"は、切迫した不気味な感覚を伴いながら分厚くヘビーに躍動している。"Light Off"は直系のダブステップで、パンチの効いていて歯切れが良く、全く無駄な要素が無い。そして、伝統的でありながらクリシェから解放されている。「White Nights」や「Kraut」など、Versionの過去の数作にはもう少し個性があったが、それでも本作はかゆい所に手が届く1枚だ。
  • Tracklist
      A1 Nucleus B1 Lights Off
RA