Machinedrum - Movin' Forward

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  • Rashad Hardenがこの世を去ってから1年が過ぎたが、いまだに昨日の出来事のように感じられる。その理由はおそらく、彼の偉業は時間を超えるものだからだろう。フットワークの世界では特にそうだ。Rashadのインパクトは単にフットワーク界の人気だけで計ることはできない。アーティストやシーン全体に対しても彼は等しく大きな影響を持っていたからだ。MachinedrumことTravis Stewartは、Rashadにインスパイアされた人の中でも重要な存在だ。『Movin' Forward』には、ソロでの新作に加え、Rashadとの未完成コラボレーション作が収録されており、売上はすべてRashadの家族に贈られることになっている。本作はStewartから届けられたRashadに対するトリビュートだ。しかも収録曲はキラーチューンという彼のトリビュートに相応しい内容だ。 Stewartによるオリジナルトラック2曲では彼が『Room(s)』や『Vapor City』で示した浮遊感のあるフットワークをさらに鋭い切り口で提供している。"All I Really want"で切り刻まれる粗めのボーカルがRashadからの影響なのかどうかは想像に任せるしかないが、恍惚のシンセは純粋にMachinedrumによるもので、とても素晴らしい響きだ。"The $$$"では、しわがれた声のラップと激しく鞭打つベースラインが縦横無尽に駆け巡りながらStewartのふんわりとしたシンセに衝突して鮮烈な効果を生み出しており、サウンド同士が決闘しているかのようだ。RashadとTasoによる"SeeSea"のリミックスでは、スムーズな表面を注意深く叩きつけて、トラップとジャングルからの影響を同じく感じさせるものに変化させている。 そしていよいよメインアトラクションだ。未完成だったRashadとのコラボレーショントラック2曲は、先日、Stewartによって仕上げられたようだ。Nick Hookがふたりに加わった1曲目の"Understand"では、Stewartの『Vapor City』における夢の世界の中に『Double Cup』のふんだんなソウルが再構築されている。Spinnが登場する"Tha Flow"では、Stewartがいつものべっとりとしたコードを加えて、Rashadによる狂乱ボーカルサンプルとコイル状のドラムパターンのインパクトを和らげている。このトラックはRashadの才能に特別新たな光を当てているわけではないが、このふたりによるコラボレーションに対する期待に応えるだけの素晴らしさがある。『Movin' Forward』にメッセージがあるとすれば、「誰かの偉業に敬意を払うならば、その最良の方法は、最大限に素晴らしいアートを作り続ける」ということだ。
  • Tracklist
      01. Understand feat. DJ Rashad & Nick Hook 02. All I Really Want 03. Tha Flow feat. DJ Rashad & DJ Spinn 04. The $$$ 05. SeeSea (DJ Rashad & Taso Remix)
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