Mark Fell And Gábor Lázár - The Neurobiology Of Moral Decision Making

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  • 近年、レイヴの解体が再び脚光を浴びている。DiagonalやLiberation Technologiesのような新興レーベルでRussell HaswellやMark Fellといった確立された存在らの需要が高まっているのだ。新世代のミュージシャンたちは彼らの軌跡に従い、従来のサウンドやダンスミュージックの要素を取り入れながら、奇妙で見事な手法でそれらを再形成している。Editions Megoマニアを自称するLee Gambleは、マイクロスコピックな姿勢のもとでテクノを実践し、Lorenzo Senniはトランスのサウンドについて奇妙なエッセーを執筆している。一方、ブダペストのGábor Lázárはざらついたシンセの音色によるマシンガンのようなパターンを繰り出しながら、鼓膜を掻き毟るレイヴサウンドを変容させ、ダンスフロアにおけるサイケデリックな特性を研究している。このような強烈にミニマルな音楽がしっかりと成立することは難しい。作品をエキサイティングにするクオリティが失われてしまうリスクがあるから、もしくは、音楽的に惹きつけるような結果よりもコンセプトが優先されるからだ。この点において、Lázárのプロダクションは成長し続けてきた。しかし、彼が大きく突き抜けることになるのは、このMark Fellとのコラボレーションアルバムにおいてだろう。 これまでも常にFellの音使いは彼よりも若いLázárのそれに比べてマイルドなものだった。特に彼が最近手掛けているプロジェクトSensate Focusでは、非常にアブストラクトなアプローチを(若干ではあるが)より明快なダンスフォームに調和させている。Fellはこうしたリリースに倣って『The Neurobiology Of Moral Decision Making』に貢献している。具体的には、同じドラムサウンドや、絶えず変化するリズムパターンを形成するクラップやキックといった非常にクリスピーな音色が用いられ、理解を超えた領域で躍動しているにも関わらず、身体に十分に訴えかけるグルーヴを感じさせている。ソロ作におけるFellはこうしたドラムサウンドを使ってハウスミュージックの肉感性をキラリと滲ませる。Lázárのシンセは興奮したハチが箱いっぱいに詰まっているかのように執拗に音を立てており、Fellのサウンドに組み合わされることで、より好戦的な空気を生み出す原動力になっている。 そこにこそ本作の課題が眠っている。こうしたふたりのミニマリストによる50分間の作品(その荒々しい要素はサディスティックですらある)とくれば常に困難を伴うものだ。時折、ふたりのインスピレーションが少し枯渇してしまう時もあり、全体的に凝り固まった退屈な印象になってくる。4曲目のゆったりと駆けるリズムは変化と展開を続けながらも単調になっているし、何度も途中で停止しているようなビートによる5曲目も同様だ。こうした場面におけるFellとLázárは、ダンスミュージックの快楽性を生み出す特性を増幅させているのではなく、不必要に干渉しているように感じられてしまう。 しかし、それ以外のトラックでは、ふたりが繰り広げる世界に浸ることは容易だ。脳をマヒさせるような上昇音が用いられた6曲目は、アルバム中盤の不調な空気からリスナーを引き上げる。短い尺ながら素敵なオープニングを飾る1曲目では、Lázárのとげとげしいシンセが、名状しがたい優雅さと共に潰れ、滑り、狂ったようにドラムとの攻勢を繰り広げ、放射能の澱みへと変容していく。12分に及ぶラストトラックでは、非常に限られた素材でFellとLázárのふたりがどれだけ急激なコントラストを絞り出せるかが披露されている。前半は眩暈を起こしそうになるほどビートが連打される熱狂ぶりだが、後半は、カタツムリのように遅く這いつくばっている。『The Neurobiology Of Moral Decision Making』の知的な制作手法は敬遠してしまうほどではあるが、劇的な性質に対する鋭い聴覚がそれを埋め合わせている。
  • Tracklist
      01. Untitled 1 02. Untitled 2 03. Untitled 3 04. Untitled 4 05. Untitled 5 06. Untitled 6 07. Untitled 7 08. Untitled 8 09. Untitled 9 10. Untitled 10