Patrice Scott - Euphonium

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  • デトロイトのプロデューサー、Patrice Scottの音楽を形容するために最もよく用いられる言葉 - それはディープだ。遡ること2006年から続くリリースと30年に及ぶDJのキャリア、そして、言わずもがな、セルフレーベルSistrum Recordingsを通じて、Scottはアトモスフェリックなダンスフロアトラックからゆっくりと着実にキャリアを築いてきた。Electrifying Mojo、Ken Collierといったモーターシティの巨人たちに影響を受けたDJとして、彼のアンダーグラウンドで控えめのスタイルは、彼をTerrence ParkerやMoodymannといったデトロイトのハウスプロデューサー周辺ではなくFred P周辺のアーティストとして位置付けている。10年が経って発表されるScottにとって初のLP『Euphonium』には全く気負うところがない。この作品は歴史を重んじるストイックなプロデューサーによるサウンドだが、そこには自分自身の道を切り開く自信が感じられる。 EPが支配的なマーケットでは実現が困難なアイデアがこのハウスアルバムでは提示されているが、その姿勢は実にScottに似合う。彼のトラック(その多くが自分のレーベルからリリースされている)はかなり巧妙だ。彼は1曲目にアンビエントトラック"A Detroit State Of Mind"、インタールードに"Sync Deeper"を収録し、LPという形式に対して折り合いをつけているが、それ以外は最も強力な彼のシングルに匹敵するトラックばかりだ。『Euphonium』の最初のリズムトラック"Distr5th"は、シンプルな4音のアルペジオから気軽に勢いをシフトさせて、洗練されたBasic Channelスタイルのスタブを何度も生み出している。タイトルトラック"Euphonium"でScottが提供しているのは、潜水ダブテクノだ。トラックにはリズミックな回転力が十分にあり、靄の中にリスナーが迷ってしまうことはない。 一方でScottのトラックには統一感がある。それはトラックがディープかどうかということではなく、どれだけ深く潜れるかということだ。完ぺきなシンセの洪水が押し寄せる中で、"The Dark Dance (E.T.A. Mix)"での吐き気を誘発するシンセとブレイクビーツや、"They Walk The Earth"のタイミングを外したエレガントなベースパターンのような、実に奇妙な瞬間が嬉しい小休止の時間を提供する。そして、プログラムと制作の思考両面において、本作のプロダクションスキルは驚愕的だ。"Hysteria"では奇妙なシンセの進行に乗せてキャッチーでサイケデリックなハウストラックが構築されている。5分が過ぎる頃には、ジャズドラマーのように自由にスウィングするスネアパターンが挿入される。卓越したシンセ使いを好みサンプリングを嫌うScottの姿勢は、彼の親友Keith Worthyだけでなく、幾分Omar-Sにも繋がり合うが、それ以外の面において彼はソウルフルなビートダウンサウンドで知られる街に住みながら自分自身の道を形成している。 Scottはそれでいいのだと思う。Sistrum Recordingsで彼は、同郷のデトロイトにフォーカスするというよりも、XDB、Leonid、Specterといった同じ意識を持つ様々なプロデューサーたちと制作してきた。Scottの音楽はデトロイトの偉人たちと意識を共にしている。しかし、『Euphonium』が示しているように、彼は偉人たちからの影響を重荷とすることなく、引き続き自分自身のユニークなサウンドを深く掘り下げることができるのだ。
  • Tracklist
      01. A Detroit State Of Mind 02. Distr5th 03. Escapism 04. Hysteria 05. Euphonium (E.T.A. Dub) 06. They Walk The Earth 07. The Dark Dance (E.T.A. Mix) 08. Sync Deeper 09. Music Therapy Pt. 2
RA