Anna Caragnano & Donato Dozzy - Sintetizzatrice

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  • 「このアルバムは、僕の師匠であるPaolo Micioniのアドバイスによって生まれたんだ」。これは先日Donato DozzyがRAに語った言葉だ。「彼から2014年の1月に電話が来て、ありがたいことに、僕のことをずっと追ってたと話してくれたんだけど、同時に、僕のキャリアには何かが不足していると指摘された。そろそろ、人の声を使わなきゃってことさ」。かくして『Sintetizzatrice』が誕生したのだった。このアルバムには完全に人の声(正確にはMicioniの推薦によって紹介されたAnna Caragnanoの声)だけを使って構築された作品がまとめられている。 Dozzyはもちろんテクノアーティストだが、異常なまで巧妙なニュアンスでテクノを表現することで他とは一線を画している。この数年間、彼は『K』(英語サイト)や『Voices From The Lake』といった絶妙なニュアンスを含んだ作品によって、テクノ通たちをまばゆい光で包みこんできた。最近ではChris Madak(aka Bee Mask)の音楽を再解釈した傑作アンビエントアルバム『Dozzy Plays Bee Mask』を制作した。アメリカのエクスペリメンタルレーベルSpectrum Spoolsに到着した『Sintetizzatrice』も、『Dozzy Plays Bee Mask』のように、完全にビートレスの音楽領域へと自信を持って飛び込んだ意欲作だ。しかし『Dozzy Plays Bee Mask』が大胆かつ刺激的な作品であったのに対し『Sintetizzatrice』は少し躊躇しているような印象だ。 『Sintetizzatrice』のレコーディングはCaragnanoとDozzyのふたりが担当している。最終的に作品の中央舞台に立っているのはCaragnanoだ。彼女の声は美しく、稀にアブストラクトになってしまうことはあるが、終止、ナチュラルな特性を保ち続けている。甘く囁き、嘆き、口笛を吹き、詠唱する彼女の声が聞こえてくる。絶妙なエフェクトを重ね合わせることで、DozzyはCaragnanoの声を全方向から彩り、最終的に普段通りのムードを生み出している。それはすなわち、悟り、驚き、憂い、そして、恐れだ。 本作の仕上がりは間違いなく素晴らしい。しかし、それにも関わらず本作には圧倒されることが無い。Dozzyが最高の仕事をする時は、彼の作品(さらに言えばDJセットも)は豊かで鮮やかな世界へ私たちを誘ってくれる。本作はこの別の場所に連れて行ってくれる性質を持ち合わせていないのだ。歌作りの技巧も若干、平坦であり、意識に残ったり、再び聞きたくなったりするようなフレーズはほとんど無い。魅力的ではあるのだが、本当に心が動かされる瞬間はすぐに終わってしまう。 初めて声を取り扱うにあたって、Dozzyはそこに全神経を注いでおり、本作には声以外のサウンドは一切使われていない。もしも、彼が普段やっている制作方法にCaragnanoの声を取り込んでいたら、どのようになっていたのか気になるところだ。制限というものはしばしば創造性を高めるものだが、今回ばかりは、どうやら押さえつけることになってしまったようだ。
  • Tracklist
      01. Introduzione 02. Starcloud 03. Luci 04. Fraledune 05. Parallelo 06. Parola 07. Festa (A Mottola) 08. Love Without Sound 09. Conclusione