son.sine - seconds:minutes:hours

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  • 2000年頃、ニュージランドのNurtureと呼ばれる短命に終わったレーベルから傑作ダブテクノ作品が続けざまに発表された。その中でもベストといえばおそらく「Upekah」だろう。「Upekah」はson.sineことLeyton Glenによる誠実な魅力が詰まったEPだ。Glenは20年以上に渡って断続的に音楽制作を行ってきたが、「Upekah」のようなサウンドの作品をプロデュースしたことは一度も無かった。発表から15年が経過する中で、「Upekah」はアンダーグラウンドにおけるクラシック的なタイトルになった(筆者のオールタイムフェイバリットのひとつだ)。この2、3年、Delsinは「Upekah」の他にNurtureのもうひとつの名盤であるMicronism「Steps To Recovery」を再発するなど、ニュージーランド産のテクノにスポットを当てている。これらの再発盤に続いてDelsinがリリースするタイトルがさらに驚きだ。「seconds:minutes:hours」はなんとson.sineによる新作EPなのだ。 収録曲そのものから、そのタイトルまで「seconds:minutes:hours」は「Upekah」と同じく、その表現に詩的な美しさがあるが、全体的なトーンはもっと抑制されている。かつてのNurtureによる魔法のようなサウンドを探しているなら、"a candle"がまさに打ってつけだ。膨らむストリングスやマイクロハウス的ドラムが用いられ、境地に至ったような感覚が控えめに表現されており、ダブテクノに非常にハマっている。 他2曲では過去に見たことのないサウンドが提示されている。それはつまり、son.sineのダークな一面だ。不吉な空気が澱む"an island"では、機械的なリズムがたった2分でフェードアウトしていき、その後はアンビエントトラックになる。"a room"も似たようなムードだが、もっとどっしりとしたテクノビートが使われている。どちらのトラックも"a candle"のような瞬間的な輝きはないものの、メランコリックなテクノという確立されたGlenのスタイルを超えて、未知なる領域に自信を持って挑んでいる。これらの収録曲が最近の作品なのか、過去のアーカイブスから選んだものなのかは想像に任せるしかないが、15年という月日が経った今でも、son.sineにはまだまだ語ることがあるようだ。
  • Tracklist
      A1 a candle B1 an island B2 a room
RA