Lawrence - Manhattan

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  • 特定のハウスミュージックオタクが「Smallville」という言葉を聞けば、反射的にパッドのメロディを頭の中に思い浮かべるだろう。思いつくダンスミュージックレーベルは数あれど、ハンブルグを拠点とするSmallvilleほど、ファンが期待するものをつぶさに提供しているレーベルは無い。ファンがこのレーベルのアーティストに期待するもの、それはパッド、軽いタッチのパーカッション、そして、Stefan Marxが描くアートワークだ。LawrenceことPeter KerstenはSmallvilleで最も信頼できる存在だが、彼のレーベルDialも長年、同様の特徴を持つドリーミーなハウスを取り扱っている。そしてもちろん、Smallevilleに提供された彼の最新EP「Manhattan」でも、いつものサウンドが全て網羅されている。 いつものサウンド以外に追加要素が何も無いのか気になるなら、まずはKerstenによるベースラインを聴いてみてほしい。暖かくスムーズなベースラインは帯域が非常に低く、通常のSmallvilleサウンドに加えて若干ながらも決定的な緊張感がほのかに生まれている。いつも通り深く靄のかかったようなミキシングだが、その表面下ではサウンドのうごめきがハッキリと感じられる。そのため「Manhattan」はウィードを吸った状態でではなく、ひとしきり酒を飲んだ状態で聞かれるようなハウスミュージックと言えるだろう。"Nowhere Is A Place"では、Smallvilleのトレードマークであるパッド自体は希望に満ちて聞こえるのだが、そのひとつの音程が別の音程や底部でグルーヴしているベースラインと一体となってひとつのメロディを形成しているわけではなく、困惑しているようにも聞こえる。 タイトルトラック"Manhattan"でも素材の組み合わせは同じように奇妙だ。しかし、Kerstenはしっかりとした主張力を持ってその組み合わせを上手く成立させている。トラックの大部分に渡ってパッドが単一のコードで延々と鳴らされており、メロディが紐解かれるのは少しの間だけで、しかもそれはほとんど知覚できないレベルだ。"Dark & Stormy"は時計の針のようなサウンドがビートを刻んでおりシンプルな内容に感じられるが、時折、ドラムサウンドが小刻みにうねるサイケデリックなサウンドエフェクトを誘発している。Kerstenは馴染みのあるサウンドをどこか不安定に感じさせるのが上手い。「Manhattan」においても一聴してSmallvilleだと分かるサウンドでありながら、明らかに歪つなサウンドを実現している。
  • Tracklist
      01. Nowhere Is A Place 02. Manhattan 03. Dark & Stormy