Afrikan Sciences - Circuitous

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  • 「歴史とは無数の事実から成る連続体である。そして、神話とは事実から拾い上げた起源と理由を使って作る模範である」と、アメリカ人エッセイストのRebecca Solnitは記したことがある。Eric Douglas Porter(Afrikan Sciences)は、この模範作りに長けている。彼はありのままの事実を使って(実際に一度、やっている)、起源についての物語という神話へと変化させて、自らのキャリアを築き上げてきた。Porterのサード・ソロアルバム『Circuitous』の収録曲は多様性があり、軋むノイズを立てながら自ら崩れていきそうなものが多く、時として、追随することが大変なことがある。アルバムのネタ元となっているのは、過去のアフリカ系アメリカ人が築いてきた広大な音楽の歴史だ。期待通りの落ち着いた景色を描いた彼は、その景色を通じて、これまでの歴史が湧き上がってくるという特定の方法によって、1つの作品へと結実させた。 "The Image"を例に挙げてみよう。「The sound image, the image sound」と、どこからともなく声が聞こえてくる。この背景にあるのは「音楽とは大きな泡の中に浮かぶ夢のようなうねりと無限に変化するメロディである」という考えであり、Frankie KnucklesというよりもAlice Coltraneに近い。"Evolved In Twists"でのテクノ、"Transient Authority"でのヒップホップ、そして、至るところでジャズという具合に、収録曲は何か特定のサウンドに倣っているような印象だ。"Feel"に至っては、遊園地の奇妙な乗り物に乗っているかのようなワルツとなっている。どの音楽スタイルを取っていても「サウンドは再利用が可能であり、そのサウンドが持つ意味合いは新たなコンテクストにおいて変化する」というアイデアは共通しており、Porterはこのアイデアに従って様々なサウンドを一緒くたにして放り込み、そこから新たな可能性が生まれるかどうかを試しているのだ。 しばらく前にTheo Parrishは「ジャズはヒップホップと同じくらい野暮ったく、ヒップホップはクラシックと同じくらい優雅だ。こうした音楽は現在に生まれているものだが、その音楽について語るための言語は時代遅れであることが多い」と語っていた。コミュニケーション手段としてもっと有能で新しい言語を必要としているのは、『Circuitous』も同様のようだ。Porterが用いる様々なサウンド、つまり、彼自身と混ぜ合わされた音の形式は、単に過去のサウンドを踏襲しているだけではない。Parrishのように、彼もコラージュや再構想のプロセスの一部となっているのだ。過去のサウンドは、それを扱うPorter自身のフィルターを通過しており、みんなが知っている音楽の歴史をパーソナルな視点から見た未来へと変容させるには、彼という存在が重要なのだ。その未来では、世界を理解することがもっと容易かもしれないし、世界がもっと理にかなっているかもしれない。 この極めて『American Intelligence』的なサンプリングの在り方こそ、表面的レベルを超越した、より歴史的で深みのあるものである。他人が作ったものを使って制作を行うPorterは、未来が常に再創造、再制作を必要としていることを知っているのだ。真っ白な紙は存在しない。未来はきっと、それまでに存在してきた全ての混沌から掘り起こされるのだ。そして『Circuitous』はその混沌を映し出しているのである。
  • Tracklist
      01. Two In The Chamber 02. Reddin Off 03. Transient Authority 04. Evolved In Twists 05. Circuitous 06. Kae 07. Feel 08. Swash 09. The Image 10. Group Home Reality 11. Alibi II 12. DBC 13. I'm Asking You KB 14. Tell Me Who Like That (Bedside Manner)
RA