Djrum - Plantain

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  • DjrumことFelix Manuelは、これまでに様々なジャンルとテンポを横断しながら制作を行ってきたが、そこには非現実な感覚を生み出すセンスが常に感じられた。彼の音楽にはキーとなる素材がいくつかあり、息の詰まるスポークンワード、ぼんやりとしたボーカル、そして、複雑に入り組むストリングスが、それにあたる。こうした素材が上手くアレンジされた時は、心を鷲掴むエレクトロニックミュージックが生まれるのだが、あまりにも自由に使われ過ぎると、押しつけがましく聞こえることもある。2013年に彼が発表したデビューアルバム『Seven Lies』は、まさにその例だった。しかし、Samural Red Sealに再登場となる今回のManuelは、ここ数年で最も強力なトラック2曲を提供してきた。 蛇のようにうねるストリングのサンプルと陽炎のように揺らめくオペラボーカルを用いた"Plantain"からは、Manuelの初期作品と同じ魅力が感じられる。レーベルメイトENAのサウンドに似た激しい振動が抜き差しされ、しばらくするとトライバルなグルーヴへと展開していく。そのグルーブは単に激しく叩きつけているだけではなく、しなやかなスイングを感じさせている。"What I Was Doing When I Was Doing What I Was Doing"は、不安障害を音楽で表現したかのようなトラックだ。ブレイクビーツによるグリッチーなサウンドを土台にして、途切れ途切れの喘ぎ声とフレーズの断片(昔のダブステップで聞けたようなフレーズだ)からメインのメロディ要素が成り立っている。Djrumの音楽は時に凝り過ぎている時があるが、このトラックのように無愛想だがエキサイティングなサウンドは、彼の音楽を新たな光へと導いている。
  • Tracklist
      A1 Plantain A2 What I Was Doing When I Was Doing What I Was Doing
RA