The Trilogy Tapes, Hinge Finger & C.E presents Joy Orbison & Will Bankhead

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  • 過去のルックブックにActressやグライムMCのD Double EをフィーチャーしてきたクロージングブランドCav Emptは、最近ではショウの為に、Kassem MosseやロンドンのデュオRezzettといったエレクトロニックアクトを東京に招聘している。毎回、彼らのように、派手な広告業界とは距離を置いて活動するアーティストをピックアップしているようだ。今回のゲストには、UK出身のJoy Orbison(驚いた事に、これが彼にとっての東京デビューとなった)、そして彼と共にレーベルHinge Fingerを運営するWill Bankheadが選ばれた。 この日のオープニングを務めたのはBankhead。彼自身の計算によると、来日するのは今回で13回目だという。かつてJames Lavelle主宰のレーベルMo Waxでグラフィックデザインを担当していたことで知られるBankheadは、Cav Emptに大きな影響を与えた人物だ。彼が主宰するレーベルのThe Trilogy TapesとHinge Fingerは、印象的なヴィジュアルと独特の音楽テイストが注目を集め、UKのクラブシーンにおける重要レーベルへと成長を遂げた。彼のDJセットは、オールドスクール・レイヴからダブまであらゆるスタイルをカバーしており、Hinge Fingerの気風が反映されていたようだ。 Bankheadに続き登場したDJ Nobuは、会場のUNITではお馴染みのアーティストだ。同クラブは現在、彼が主催するイベントFuture Terrorの基点の1つとなっている。深夜遅くのマラソンセッションを得意とするNobuが、この日は“一般的な”ピークタイムの午前2時からプレイ開始。普段と比べると彼のセットはバウンシー、そしてアップビートで、UKファンキーのようなパーカッシブなシンコペーションが聴こえる瞬間さえあった。 その後Joy Orbisonが登壇。テクノ中心の選曲からゆっくりとスタートし、だんだんとRoman Flugel “Sliced Africa”やJackson Lee “Sumba Togola”などアフリカ的なリズムを織り交ぜていった。ちなみにJoy Orbisonは昨年、BBC Radio 1のEssential Mixの中で、Leeのプロダクションを非常に効果的にプレイしてみせた。1時間ほど経った頃からは、彼が最も深く関わっているであろうベースヘヴィーな変型UKテクノをかけ始め、ObjektやPearson Soundによるスパイキーなカットを投下。自身が生んだアンセム“Sicko Cell”の4つ打ちミックスがかかると、日本のクラブのダンスフロアではなかなか聴く事がないであろう合唱が起きた。そして人気トラック“GR Etiquette”のピッチを落とした、エモーショナルな未発表バージョンは、彼のオリジナルプロダクションのユニークなポテンシーをオーディエンスに思い起こさせるのに十二分であった。終盤にはBankheadが再び姿を現し、Joy OrbisonとのB2Bセッションを披露。クラシックなシカゴハウスの数々は、2人が初期クラブカルチャーに敬意を表しているようであった。Joy Orbisonは、今の世代で最も才能があり、先進的な有望株の1人だろう。しかし彼の姿勢は、過去の伝統とイノヴェーターへのリスペクトに満ち溢れたものだ。それは、Cav Emptのブランド方針と似ているようにも感じられる。
RA