RPR Soundsystem in Tokyo

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  • 2000年代に産声を上げ、現在テクノ・ハウスシーンの中でも確固たる地位を築いたルーマニアン・ハウス。その火付け役と言える[a:rpia:r]のRhadoo、Petre Inspirescu、そしてRareshが、ついにRPR Soundsystemとして揃って来日。LIQUIDROOMのメインフロアにて一晩に渡ってB2Bを繰り広げた。 以前から期待の声が大きかったこのパーティー。早速フロアに向かってみると、始まって1時間足らずでピークタイムと見間違う盛況ぶり。対照的に3人は急ぐことなくじっくりと彼らのペースを整えていた。ツール、ループ的な楽曲を用い、フレーズではなく鳴り方で流れをつくるような感覚だ。気づけば踊る場を見つけるにも少々苦労するほどに混み合う中、3人の個性も徐々に発揮されるようになっていた。Rhadooは二人と比べてもより低い重心を保ち、徐々にモーフィングしていくような継ぎ目のない展開。Rareshはミックス、選曲ともにリズムの際立った攻めの感覚がある。Petreは2人の個性に対応しつつ、感性を活かし最適な方向へと導いているように感じられた。互いに呼応しあい、緩やかな波のような有機的な展開をキープし続ける。その中では一小節のドラムブレイクですら興奮につながっていた。 一方、上階のLIQUID LOFTは音量的な制限もあり、下とはまた違った空間を創りあげていた。DJ PI-GEは繊細なフレーズからファンキーで重いグルーヴまで、徐々に移行しつつ緩やかに場を作っていく。絶好のバトンを受けたKABUTOはエレクトロ、ブレイク的な刺激を生むパターンで、よりLOFTの環境で効果的な楽曲を模索していく。上下階でジャンルは近くとも、展開やかけ方で差異をつけることで、メインのみに人が集中することなくパーティーに循環が生まれていた。 時刻的にも折り返し地点となり、フロアはまさに飽和状態。普段近いジャンルのパーティーでは見かけないような人々も、興奮を隠すことなく楽しんでいる。そんな状況下でRPRの3人のペースもやや上昇したが、いきなり派手にすることはなく、パッドなどの所謂ウワモノのフレーズがついに入ってきた、という具合だ。Petre、Rareshが疾走感あるミニマルハウスを投下するなか、上昇感を保ちつつ骨組みのグルーヴに転換するRhadooがバランサーとして機能しているように感じた。熱量の高まりとともに針飛びも発生していたが、それでもフロアにかけられた魔法は解けてはいなかったようだ。 LOFTも常に人が行き交い、メインフロアの酸欠状態から逃れてきた人々が、ひと踊りしたのち戻っていくという流れもできていたようだ。KABUTOに続く3番手は、長くLIQUIDROOMのパーティーに関わってきたTaroがプレイ。試行錯誤の感覚もあった前の二人の流れをうけ、この日の中でも完成度の高い選曲でベテランの貫録を見せた。気づけばLIQUIDROOM上下階を繋ぐ階段から陽の光が差していた。それでも尚、時間感覚の喪失から逃れられないほど濃厚な体験があった。 とは言え、朝になるとやや小休止する人と待ち構えていたように盛り上がる人との差異が表れてくる。人数はやや減った(それでもまだフロア全体が埋まっていた)が、流れる熱気と、応えるRPRの3人の気迫は滾るばかり。かかる楽曲は一貫してビートとサブベース、漂うエフェクトを軸としたミニマルグルーヴ主体であったが、だからこそフェーダーを一瞬下げるような、シンプルにフロアをかき乱すギミックが改めて心地良い。終了の時刻となると、Rareshによってさりげなく流れが締めくくられた。感傷もなくいきなり夢から覚めたようで、それも不思議と「らしい」と思えてしまった。 Cocoonファミリーとしての活動を経て、Ricardoの次を担う逸材とでもいうべき活躍を見せるRaresh、アーティストとしての類稀なる音楽性を発揮し続けているPetre、そしてDJとしての研ぎ澄まされた感覚を磨き続けているRhadoo。一言にルーマニアン・ハウスと表せないほどに三者三様な活動を行っているが、RPR Soundsystemとして集合した今回、必然的とも思えるようなコンビネーションを見せてくれた。世界的に注目を浴びるDJとは言え、ヴァイナル中心、パッケージとしての露出も決して多くはない彼らを招致し、これだけの盛り上がりを見せるパーティーを日本で実現したのは素直に驚いた。 近年屈指の熱狂を体験できたが、パーティーの最終形として、全てがコントロールされていたわけではない。客層もクラブ慣れしているというよりは、中規模なフェスにも近い部分があった。飲み過ぎてふらついている人も度々見かけられ、中にはフロアにて「どこの国のDJなの?」なんて声も。逆に言えば、そういった人々をも引き付ける魅力が伝わっていた何よりの証拠だ。だからこそ混沌とした熱気と、DJではなくそこで流れる音とムードに価値が置かれる一夜となったのだろう。RPR Soundsystemのアクトとしての完成度、サウンドシステムやライティングによる妥協のない演出も相まって、忘れえぬ強烈なパーティーとなった。 Photo credit: Masanori Naruse