Micronism - Steps To Recovery

  • Share
  • Micronismは、ニュージーランドのDenver McCarthyによるプロジェクトだ。90年代と00年代に活動していた彼だが、その存在はそれほど知られていない。Mechanism名義のもと、McCarthyは、毒々しいハードコアテクノを制作していたが、今回のMicronismは、その名前が示す通り、Mechanismとは全く逆の、静かで内省的な世界と極微な単位で作り込むサウンドを探求している。Micronismはこれまで2つしか作品を残していない。その内の1つが1999年に発表されていた「Steps To Recovery」であり、今回、Delsinが再発することになったわけだが、彼らは2013年にも、Nurtureから発表されていたSon.sineによる傑作「Upekah」を再発している。本作に収録された4曲は、Son.sineのEPほどチルアウトな内容であるわけではないが、その卓越ぶりは一切劣ることなく、包み込むような暖かさと、切り裂くような鋭いサウンドを見事なバランスで両立させている。 例えば、"Engaging Causeless Mercy"のメロディは、針穴に糸を通すような正確さだが、アッパーな雰囲気の中に程良い流動性がある。最初は、何も無い空間を不気味に回転しているだけだが、眠たげなパッドによって、トラックは一気にララバイの雰囲気に変化していく。同様のアレンジは"Constructing Space"でも聴くことができ、最初の3分間は漆黒とした不穏な空気が漂っているが、その靄の中から解き放たれる和音が至福の響きをもたらし始める。もっとダイレクトに喜びを表現したのが、残りの2つのトラックだ。"The Quiet Mind"のキックは、歯切れの良さが若干増しており、シンセが軽やかに漂う様は、果てしなく心地よい。そして、"Steps To Recovery"の基調となっている2つのコードループは、いつまでも嬉しそうに歩んでいきそうな印象だ。
  • Tracklist
      A1 Engaging Causeless Mercy A2 The Quiet Mind B1 Constructing Space B2 Steps To Recovery
RA