Kerridge - Always Offended Never Ashamed

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  • 昨年、Samuel Kerridgeにインタビューした時、彼はスタジオで8時間くらい同じループを聴いて没頭することがあると語っていた。彼曰く「本当に我を忘れちゃうんだ」とのことだが、この手のグロテスクなノイズに、これほど夢中になれるというのは精神に異常をきたしているのではないかと思えてくる(おそらく、実際にそうなのだろう)。しかし、『Always Offenderd Never Ashamed』の文脈では、この異常性が完ぺきに意味を成す。本作をなんとなく流して聞こうとしても、ノイズの応酬による不快感が付きまとうことになるだろう。本作を聴くにあたっては、そうではなく、完全に自分を作品に預けなければならない。つまり、大音量で聞くということだ。 そうすれば、本作が21世紀の都市生活における重圧を見事に表現していることが分かるはずだ。電子音によって作られた音楽であるにも関わらず、そのサウンドは生々しく根源的で、太古の時間すら感じさせる。Kerridgeのファーストアルバム『A Fallen Empire』はテクノと呼ぶことができる作品であり、昨年の"Operation Neptune"も、ダンスフロアでプレイされることを意識したものだった。しかし、本作で我々を出迎えるのは、壮大なドゥームメタルのギターリフをピッチダウンして、眩暈を起こしそうなギットリとした動きに変化させたようなサウンドだ。 これにより、奇怪で急激な動きと荒れ狂うドローンから成る本作に、抑えきれないエネルギーによってねじ曲がっていくようなムードが生まれている。そのため本作は、グリッド上に正確に組んでいくラップトップを使った作品というよりも、Sun O)))によるフリーフォームなセッションと言った方が近い(ちなみに、Kerridgeは好きなグループとしてSun O)))を挙げている)。歪んだKerridgeの声がミックスに重ねられると、凄まじさは一層激しくなる。胸を押し潰すほどの重量感はジャングルやダブレゲエと繋げて考えることはできるが、それはあくまで抽象的に意味での話であり、本作では、クラブミュージックは遠く離れた記憶となっている。 アルバムを聴き進めていくに従って、身体にダイレクトに訴えかけてくる刑罰のようなカタルシスサウンドに押し潰されそうになる中、興奮のあまり呼吸する空気を求めて嗚咽する自分に気付く。しかし、Kerridgeは、単にリスナーを圧倒的なサウンドで打ち負かしそうとしているだけではない。例えば、"WOSN"の美しさは、サハラ砂漠に吹く熱く乾いた風と、その風によって流されていく砂のようであり、魂の救済が訪れる瞬間だ。最後の"WIAGW"は、それまでに収録された音楽の内容を考えると、かなり大胆なトラックとなっている。粉々になっていくビートにアルペジオシンセの轟音が組み合わされ、そのサウンドはボディミュージックが録音されたカセットをぐしゃぐしゃにしたかのようなパンク感がある。トラックが持つ軽やかな雰囲気には安堵を覚えるだろう。
  • Tracklist
      01. GOFD 02. MPH 03. DAYT 04. TRN5 05. WOSN 06. NCV 07. WIAGW
RA