S.A.M. - Delaphine 003

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  • デンマークのプロデューサーSamuel Andre Madsenが音楽を作り出してから数年になる。しかし、彼がS.A.M.名義で突出したクオリティのサウンドを生み出すようになったのは、この1年半のことだ。2013年に彼が設立したレーベルDelaphineは、彼の作品の中でも最も面白いものを発表しており、深く意識に潜り込むダブテクノや、時には、テックハウスやAutonomicスタイルのドラム&ベースなどを聞くことが出来る。 Delaphineから3枚目となるMadsenのリリースには、焦がれるようなホーンや、フィールドレコーディング、そして、大らかに波打つシンセが繰り広げる30分間の鼓動が収められている。どうやら「Delaphine 003」は、キリストの変容とその聖画像にインスパイアされた作品であるようだ(Madsenは今回のEPをレコーディングしている時、神学を学んでいたらしい)。本作は上手く緊張感を抑制していながら、優美な雰囲気を実現している。唯一、リズムとして聞きとれるのは、翼を羽ばたかせている音くらいで、トラックには、ふわふわとした鳥のさえずりや、オーケストラによる壮大さが静かに漂うアンビエント空間が広がっている。 こうしたコンテクストを知らなければ、本作が宗教を参照していることに気付く人はまず無いだろう。しかし、実際のところ、そんなことは、あまり重要ではないと思う。明らかなのは、「Delaphine 003」はMadsen個人の経験に深く根付いたレコードであるということだ。彼は教会やゴスペルの聖歌隊で音楽を演奏しながら育ったのだが、その感性の強度は、落ち着きをはらった本作に、しっかりと投影されている。
  • Tracklist
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RA