Klaus - Tele

  • Share
  • ダブステップ誕生直後に発生した多様な音楽活動からは、名声を望まずじっくりと丹念に制作するタイプのプロデューサーが数多く輩出された。彼らの制作ペースは1年に1枚程度であることも少なくない。Joe、Pangaea、Elgatoといった重要アーティストの中でも、とりわけKlausは地道な活動を続けている。2011年のデビュー以降、彼はダブステップとガラージから取り入れたリズム構造をより深い場所へと抽象化してきた。その作品は決して万人受けすることはなかったが、彼の親しい友人でもあるMount KimbieやJames Blakeらの音楽を彷彿とさせるものだった(KlausはBlakeが主宰する1-800-Dinosourの一員でもある)。しかし、近年のKlausが描き出す世界ではさらに音数が少なくなっている。そのグルーヴは動いているのではなく、もはや静止しているかのようなのだ。 自身のレーベルから3枚目となるKlausの最新作でも、こうした少数音で情景を喚起させる音楽言語が追求されている。今回、抽象化を経た後に残ったガラージの要素からは完全に勢いが削ぎ落とされ、そのサウンドは2013年の"BT Gulf"のような漆黒の深淵ではなく、より柔らかく心和らぐものへと変わっている。また、サンプリングしたストリングスが収録トラック3つに共通して用いられており、クラッシュト加工したベルベットのように豊かに重なり合っている。"Tele"では中盤、ダブのグルーヴを感じさせる場面があるが、緩やかな流れが妨げられたりはしていない。さらに素晴らしいのが"Delta"だ。2倍のスピートで生々しく鼓動が刻まれながらも、トラックは海中を突き進み、時折、海面近くにまで浮上してくる。そして奇怪な方向性に進んでいるのが最後に収録された"Luc"だ。彼方では不穏な爆発音(花火、もしくはもっと不気味な何かだ)と鐘の音が鳴り響くと、不思議なことにKlausの音世界には平穏がもたらされる。
  • Tracklist
      A1 Tele B1 Delta B2 Luc
RA