Stereociti - Rain

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  • 2014年の初頭により広がりを持った活動の場を求め、日本からベルリンへと移住したKen SumitaniことSTEREOCiTIは、ドイツのディープ・ハウスを手掛けるレーベルの中でも内向的で深遠な作風が強いMojubaに所属する唯一の邦人アーティストだ。Mono Village名義や匿名での作品でもシカゴ・ハウスやNYハウスへの敬愛を示すなど、ハウス・ミュージックへの造詣の深さは言うまでもないが、やはり一年半ぶりとなるSTEREOCiTI名義での新作は別格であると言わざるを得ない。 雨音が響く環境音で始まり、そこに雨粒が滴り落ちるようなメロディーが入ってくる"Rain"は、正にSTEREOCiTIらしい燻る情熱を隠し持った仄かにエモーショナルなディープ・ハウスだ。呟くようなボイスサンプルや小気味良く闊歩するようなリズム感、そして少ない音数の構成で間を活かし、自然と内から情熱が染み出してくる作風は決して激昂させる派手な曲ではない。しかし、無駄を排した事で生まれるその音楽性は、日本で言う侘び寂びと呼ばれる美学そのものだろう。一方でアシッド・ベースがじわりと滲む"Ahead"では、アシッド・ハウスのような高揚感をもたらすのではなく、透明感のある繊細なパッドと合わせてより穏やかで内向的なディープ・ハウスを展開する。そして簡素で乾いたパーカッションと朧気に浮かび上がる幽玄なメロディーにより、淡々とした灰色の世界が展開される"Process Of Decay Short"では、幻惑的な音響により酩酊感を引き起こす。3曲どれもがSTEREOCiTIらしい引き算の美学なる無駄のない楽曲で、そこからじんわりと染み出してくる低温のソウルフルな感情は正にアーティストの個性と呼ぶべきものだ。ダンス・ミュージックに寄り添いながらも享楽へ向かう事はなく、俗世と隔離されたようなこの侘び寂びを求道的に突き進むSTEREOCiTIは、音楽によって深く穏やかな感情を発露するLarry Heardとも共振する。
  • Tracklist
      A1. Rain B1. Ahead B2. Process Of Decay